ぎゅっと、力いっぱい抱きしめられた。唇で耳たぶを噛まれる。
 手が、顎に添えられる。
 後ろを向かされる。
 お兄ちゃんの顔が、すぐ近くにあった。
 無意識のうちに、目を閉じる。
 一瞬後、唇が重なった。
 あたしの、ファースト・キス。……じゃない。
 そういえば、初めてではない。忘れていたけれど、何年も前にお兄ちゃんとキスしたことがあった。
 まだ小学校の三年生か四年生の頃。昼寝していたお兄ちゃんを見て、悪戯心を起こしたのだ。
 だけど今回のキスは、あれとは違う。
 お互い同意の上で重ねた唇。それは恋人同士がする、大人のキス。
 閉ざした唇を割って、舌が口の中に入ってくる。あたしも舌を伸ばして、絡め合った。
 温かくて、ぬるぬるとして、軟体動物のように動く舌。だけどそれが、すごく気持ちいい。
「あ……ふぅん」
 唇が離れると、無意識のうちに甘い吐息が漏れた。
 急に恥ずかしくなって、顔を見られないように前を向く。
 背後から回されたお兄ちゃんの両手が、また胸を包み込んだ。発育途上の小さなふくらみを、ゆっくりと優しく揉みはじめる。
 小さな円を描くように手を動かして、手のひらで乳首を転がす。
「ん……んふ……ぅん」
 すごく気持ちいい……っていうほどではないんだけれど。ちょっとくすぐったくて、ちょっと気持ちいい。
 ずっと、こうしていてもらいたい。もっともっと、気持ちよくなれそうな気がする。
 胸を愛撫されながら、あたしは手を後ろに回した。
 お尻に触れている硬いものを、もう一度握る。そうして、手を動かしてみる。こうすると男の人は気持ちよくなるんだって、聞いたことがあった。
 だけど、力加減が難しい。性器は敏感な部分だから、あまり乱暴にすると痛いかもしれない。あたしがひとりエッチで自分を触る時も、そっと触れないと痛みを感じることがある。だけど男の人のって、すごく硬いし、大きいし。少しくらい力を入れないと、かえって物足りないかもしれない。
 手の中で、お兄ちゃんのがびくんびくんって脈打ってる。だんだん、あたしも興奮してくる。お兄ちゃんのエッチなところを触ってるんだって思うと、顔が火照ってくる。
「……舞衣ちゃん、気持ちいいよ」
 耳元でささやかれる。うなじにキスされる。
 片手が、下へ移動していく。
 お腹の上を滑って、お臍を通り過ぎて、さらにその下へ。
「あっ! ……んっ」
 触られてしまった。
 女の子の、いちばんエッチな場所。
 いちばん恥ずかしい場所。
 いちばん好きな人にしか、触らせちゃいけない場所。
 指先がゆっくりと動いて、割れ目の上をくすぐっていく。
「あっ……あ、ふぅ……、んっ」
 気持ち、よかった。
 胸を愛撫されるのよりも、ずっとはっきりとした快感だった。ひとりエッチの時よりも、ずっと感じているような気がする。
「んっ、……んふっ!」
 指先が、割れ目の中にもぐり込んで動く。
 そのたびに身体がびくっと震えて、手はお兄ちゃんのものをきゅっと握ってしまう。
「んっ、んくっ……ぅんっ、あっ……」
 小刻みに震える指。
 抑えようとしても、無意識のうちに声が漏れてしまう。
 エッチな声。友達に借りて観たアダルトビデオの女優みたいな、エッチな声。
「気持ちいい?」
「うん……ぅん……」
 熱い。
 お湯に浸かっているからじゃなくて、身体の芯が熱い。下腹部が、お腹の奥の方が、どんどん熱くなってくる。。
 こちょこちょと動いているお兄ちゃんの指が、少しずつ少しずつ、あたしの中に入ってくる。
「あ……は、ぁ……ぁんっ! んっ、く、ぅん」
 いつの間にか、ひとりエッチでは経験したことがないくらいに深く挿入されていた。
 あたしよりもずっと太い、お兄ちゃんの指。
 中で動くと少しだけ痛くて、だけど膣全体に快感が走る。
 身体が震える。
 深く、深く入ってくる。
 痛いような、苦しいような、だけど不快ではない不思議な感覚。今まで感じたことのない、奇妙な充実感があった。
「あぁ……、あ……、んく……」
 指が引き抜かれていく。指先だけが膣内に残っている。
 そこからまた、ゆっくりと奥に侵入してくる。
「あ……っ……ぁっ……、あぁっ!」
 一番深い部分まで届いている。身体の中を触られている。
 また、引き抜かれていく。
 また、入ってくる。
 何度も、何度も繰り返す。
 あたしは今、お兄ちゃんの指とセックスしていた。
 女の子の部分はじんじんと痺れたみたいになって、頭がぼーっとなってくる。
 なにも考えられなくなる。
 身体の中で動く指を感じることだけに、すべての神経が集中していた。
「あ、ぅんっ、おにぃ……ちゃ……気持ち、……い……イぃっ!」
 全身を突き抜ける快感。
 上体が仰け反る。
 それは今まで経験したことのない、激しい衝動だった。
「あっ……あんっ! あっ……んくっ……んっ! んぁっ」
 気持ちいい。
 気持ちいい。
 もっと。
 もっとして欲しい。
 もうちょっと。
 もうちょっとで……
「イキそうなの?」
 お兄ちゃんが訊いてくる。
 これが、そうなのだろうか。
 もうちょっと、もうちょっとでなにかに達しそうな気がする。
 これが、イクっていうことなんだろうか。
 あたしにとっては初めての経験だ。
「わ、わかんないよ……そ……うなの? あっ……これ、が……あぁっ、あぁぁぁんっ!」
 一瞬、頭の中でフラッシュが光ったような気がした。
 意識が朦朧として。
 ぐるぐると回っていた視界が、急に暗くなっていった。


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