部屋に戻ったのは玄関でしばらく休んでからで、それでもやっぱり玲の肩を借りる必要があった。
そのまま、ベッドに倒れ込む。
心底、疲れきっていた。主に精神的な理由で。
身体に力が入らない。
それでも、また、熱いものが身体の奥で燻っていた。疲れきっていても、このまま眠ることなどできそうにない。
「もう一回、する?」
楽しそうに笑って、玲が覆い被さってくる。
あたしと違って、余裕の感じられる表情だった。
なんだか悔しい。
今日は一方的に攻められてしまったような気がする。バスの中で反撃はしたけれど、その後にまたやり返されて、実際のスコア差以上に惨敗の気分。
悔しい。
このままでは終われない。
双子とはいえ、一応は『姉』である。妹……もとい弟に負けっ放しではいられない。
なにか、反撃の手段はないだろうか。
少し考えて、ひとつ、思いついた。
例によって、その結果をよく考えもせず実行に移してしまう。
「ねぇ、レイ……?」
「なぁに?」
「……いっぺん死んでこいっ!」
ベッドの上に仰向けになっていたあたしと、その上にまたがっていた玲。
その体勢で、思い切り膝蹴り。
振りあげた膝はまともに股間を直撃し、玲は意味不明な悲鳴を残して悶絶してしまった。
――そこが男性の急所であることは知識では知っていたけれど、まさかこれほど効果てきめんとは。
玲が気を失っている隙に、パンツを脱がせる。大丈夫、そこは出血などはないようだ。
荷作り用のビニール紐を探し出してきて、手脚を大の字にしてベッドに縛りつける。
そしてのんびりと、玲が目を覚ますのを待った。
「……っ、ちょっ……セイっ、なにこれっ?」
目を覚ました玲は、自分の置かれた状況を認識して顔色を変えた。
驚くのも当然だ。ベッドに縛りつけられて身動きの取れない状態なんて、初めての経験だろう。
「ん? だって今日はレイに一方的に苛められたような気がするんだもん。仕返し」
「苛めたって……お互い様じゃん!」
「いーや、絶対にあたしの方がヤラれてた。だから、これでプラマイゼロね?」
「って……なにするつもり?」
怯える小動物のような目。すごくそそられる。
「そんなに怖がらなくてもいいよ?」
わざと優しい口調で言う。
「気持ちイイことしてあげるだけだから。……バスの中みたいに、ね?」
帰りのバスでされたことを思い出したのだろう、怯えた表情がさらに引きつる。
玲より優位に立つために思いついたことはふたつある。
ひとつは、バスの中でのこと。
もうひとつは、映画館のトイレでのこと。
声を出せないように口を押さえられての行為は、陵辱っぽくて、それ故に昂奮してしまった。だから今度は、あたしが玲を『陵辱』する番。
「レイちゃんのって、すっごい元気だもの。まさかバスでの一回くらいで満足してないよねぇ?」
玲のスカートの中に手を入れる。
そこは触れる前からもう大きく、固くなっていた。
「縛られて興奮するなんて、レイってばM?」
からかうように言って、玲の太腿の上にまたがる。すぐ前にそそり立っている男性器を両手で包み込む。
手を上下に滑らせる。
滑らかな、すべすべした手触り。
温かいというよりも、熱い。
手の動きに呼応するように、びくっ、びくっと脈打っている。
「あっ……ぅんっ……あっ、はぁぁっ」
優しい愛撫に応える、甘く切ない声。
それがだんだん大きくなってくる。
もう、どんな風にすれば玲が感じるのかはよくわかっている。微妙な力加減も覚えた。
玲を悦ばせること、玲をいかせることは思いのままだ。
あたしってばもしかして、結構うまいのかもしれない。
「あっ……あぁっ! せ、セイ……っ!」
「イキそうになったら、言ってね」
手の動きを激しくしていく。
「あぁっ……もうっ! ……あぁっ!」
玲の腰も上下に動いている。今にも達してしまいそうな雰囲気だ。
そこで手を止める。
「あっ…………セ……ぃ……」
切ない潤んだ瞳に、微かに混じる恨めしげな気配。
おそらく、あと一秒でも続けていたら射精していたはずだ。
「……そんな簡単にいかせてあげると思った? 言ったでしょ、仕返しだって」
「セイぃ……」
「そんな泣きそうな声出さなくても、ちゃんといかせてあげるよ。……いつかは、ね」
意地悪く言いながら、玲から離れて立ち上がった。
自分のスカートのファスナーを下ろす。
リボンを取り、ブラウスのボタンもひとつずつ外す。
ブラとショーツ、ニーソックスだけの下着姿でベッドの脇に立った。
「せ、セイ……?」
「あれぇ? どうしたの? 触れてもいないのに、どうしてそんなに大きくなってるのぉ?」
玲の股間は固くなったまま、はちきれそうなほどに膨らんでいる。そして視線はあたしの身体に釘付けになっている。
思った通りだ。いくら女の子みたいな外見でも、その中身は男子高校生。やっぱり、女子の裸には興味があるし、興奮するのだ。
「レイちゃんってば、ドコ見てるのぉ?」
視線を意識しながら、ゆっくりとブラジャーを外す。
何度も性器を触り合っていたのに、玲の前で裸を晒すのは初めてだった。
正直なところ、かなり恥ずかしい。普段ならできなかったかもしれない。だけど今日はあたしもすごく昂っていて、とても平常心とは言い難い精神状態だった。
パンツとソックスだけという、今まででいちばん全裸に近い姿で、また玲の上にまたがる。
これ以上はないというくらいに大きくなって脈打っているものを両手で包み込む。
「あっ……はぁっ、あっんっ……んんっ」
切ない声をあげながらも、視線はあたしの胸に向けられたままだ。
そんな様子が可愛らしい。
そして、なんとなく嬉しい。
自分の下着の中に手を入れると、そこはもうぐっしょりと濡れていた。ぬるぬるとした蜜をたっぷり手に取って、それを大きくなった玲に塗りつける。
摩擦が減って、手の動きがよりスムーズになる。
玲を包み込んでリズミカルに上下する手。
その一往復ごとに、玲は鼻にかかった甘い声を漏らす。
一往復ごとに、その声が大きく、切なくなってくる。
「あぁ――っ、せ、セイっ! も……ぅっ!」
切羽詰まった声。
涙で潤んだ瞳があたしを見上げる。
「……もう、意地悪しないで」
「意地悪? どぉしてぇ? 気持ちよくしてあげてるだけじゃない?」
手のひらでそぅっと触れながら、意地悪く言う。
玲がびくっと震える。
すぐに手を放す。
「セイぃ……」
泣きそうな声。
「……あ、あたし、もう、おかしくなっちゃうよぉ……」
「なっちゃえばぁ?」
根元から先端まで、人差し指をつぅぅっと滑らせる。
びくびくっと震える。
先端から透明な液体が滲み出してくる。
指先でこちょこちょとくすぐって。
また、ひと呼吸の間を置く。
中断された行為の続きを求めるように、玲の腰が蠢く。
そんな反応が楽しい。
また、手を触れる。
切なげな吐息が漏れ、固い男性器がぴくりと震える。
自分の蜜で濡らした両手で包み込んで、射精する寸前のところまで優しく擦る。
ぎりぎりのところで手を離す。
玲の様子を窺いながら、指先で軽くつついてみる。
射精するまでは感じさせず、しかし萎えさせもせず。
ぎりぎりの状態を続ける。
玲の喘ぎ声がだんだん大きくなり、悲鳴じみてくる。
目から涙が溢れ出している。
「お願い……セイ……いかせて……いきたいよぉ」
「……」
さすがに、そろそろ可哀想かもしれない。
可愛い反応をたっぷりと楽しんで、あたしの気も晴れた。
そろそろ、最後までしてあげてもいいかもしれない。
焦らした分、うんと気持ちよくしてあげよう。
「……いいよ、いかせてあげる。だから、たくさん出しなさいよ」
身体の位置を少しずらして、玲の上に覆いかぶさった。
ちょうど、胸が玲の下腹部に当たる位置だ。
胸の膨らみを、固くなった部分に擦りつける。
残念ながら、あたしの胸には玲を挟んであげられるほどの谷間はない。だから、手と胸の間に挟むようにした。
「あぁっ……あぁんっ! あぁっ!」
「……んっ……んふっ」
新たな刺激に、玲が喘ぐ。
あたしも、声を上げてしまう。
単に面白半分でやってみたことだけれど、この体勢はあたしも気持ちよかった。
固くなった玲の分身が、胸の先端に当たる。指とは違う独特の弾力に、乳首が刺激される。
身体を小刻みに揺すって、玲を胸に擦りつける。
そうすることで、あたしも擦られる。
硬くなったペニスと、固くなった乳首。
お互いを刺激し合う。
興奮してしまう。
今の状況って、これまででいちばん全裸に近い格好で、玲に触れている。これまででいちばん、玲の下半身が顔の近くにある。最接近した時、唇とペニスの先端との間隔はほんの数センチしかないのだから、どうしても意識せずにはいられない。
口で性器を愛撫することは、ごくありきたりな性行為のひとつだ。
試してみたい、と思わなくもない。
玲のそこを舐めたら、玲にそこを舐められたら、いったいどんな風に感じるのだろう。
指で触るよりも、いやらしい行為。
だからこそ、してみたい。
だけどそれは、あたしの基準では「越えちゃいけない一線」の向こう側。
実の姉弟で、恋愛感情もなしに、してはいけないこと。
エッチなことをしている最中は、その決意が揺らぎがちだ。
玲とのエッチが気持ちよすぎるために、もっともっと気持ちよくなりたいと思ってしまう。それ以外のことが、どうでもよくなってしまう。気持ちよくなるためなら最後までしたっていいような気がしてしまう。
だけど、だめ。
エッチに夢中になっている時は、頭が普通じゃないから。
その場の勢いで、そんなことしちゃいけない。理性がある時に決めたルールは絶対に守らなきゃいけない。
我ながら、少々意外ではある。自分が、こんなに身持ちの堅い人間だったなんて。
玲に初めてをあげちゃいけない。ちゃんと、しかるべき相手と経験した後ならともかく。
とはいえ、その「しかるべき相手」については今のところ心当たりもないのだけれど、それは玲ではない、という漠然とした感覚はある。
キスくらいなら、いい。
性器と皮膚の接触もいい。
だけど、性器と粘膜の接触はだめ。
それが、ルール。
なぜそこが境界線なのかという、論理的な理由があるわけではない。ただ、どこかに線を引かなければならなかっただけ。
流されないためには、とにかく、はっきりとしたルールが必要だったのだ。
たぶん、今の境界線は妥当なところだろう。
これでもお互いに充分すぎるほど気持ちいいのだから。
だから、余計な想いを頭から追い出して、行為に集中する。
ペニスのいちばん敏感な部分に、自分の胸のいちばん敏感な部分を擦りつける。
気持ちよく、なりたい。
一緒に、気持ちよくなりたい。
ちらり、と視線を上に向ける。真っ赤になった玲の顔が目に映った。
「あぁっ! あぁ――っ! も、もうっ!」
「いいよ、いっていいよ。このまま出して!」
玲が、腰を突きあげてくる。
あたしも、身体の動きを大きくする。
両手も動員して玲を擦る。
「あ――っ、あぁぁっ! あぁっ――はぁぁっ!」
一瞬、胸にお湯をかけられたかのように熱く感じた。
胸に押しつけられたものが、びくんびくんと脈打っている。
脈打つたびに、手にも、ねっとりとした温かい感触が広がっていく。
最後の一滴まで放出して、玲が大きく息を吐き出すまで、そのままの体勢でいた。
胸全体が、すごく熱かった。
ゆっくりと身体を起こす。
胸と手が、そしてまくり上げられた玲のスカートが、白濁液でべっとりと汚れていた。
大量の精液が発する独特の匂いが鼻をつく。
すごい量だった。
バスの中でも一度射精しているのに、昨日も何度もしたのに、今まででいちばんたくさん出たかもしれない。
そんなに、気持ちよかったのだろうか。
そんなに、興奮したのだろうか。
その理由はなんだろう。胸を擦りつけたことだろうか。あたしが全裸に近い格好だからだろうか。
なんにせよ、あたしは達成感を覚え、また、悦びも感じていた。
弛みがちな口元に手をもっていって、精液を舐めとる。
普通に考えれば美味しいものではないのに、この味と匂いがすっかりやみつきになっていた。まるで、媚薬のようにあたしを興奮させる。
だから手が綺麗になると、玲のスカートを汚している精液も一滴残らず指で拭って舐めとった。
最後に、いちばん量が多い、胸を汚している分。
それを拭い取ろうとしたところで、また、いいことを思いついた。
「……ね、レイ?」
胸の精液はそのままに、まだ呆けたように脱力していた玲の顔に覆いかぶさった。
精液まみれの乳房を、口元に押しつける。
「……舐めて、綺麗にして」
「ん……」
玲が唇を開く。舌を伸ばしてくる。
「ぁ……んっ、ふぅ……」
舌が、胸の膨らみに押しつけられる。そこを汚している精液を舐めとっていく。
その行為は、ちょっと……いや、かなり気持ちよかった。胸を手で愛撫されたことはあるけれど、口での直の愛撫はまた別格だ。
唇や舌が乳首に当たると、思わず悲鳴じみた声があがり、身体が震えてしまう。無意識のうちに、腰が蠢いてしまう。
いつしかあたしは、精液が残っている部分などお構いなしに、乳首を玲の唇に押しつけていた。
「……あぁっ!」
玲の口が、あたしの小さな乳首を含む。
唇をすぼめて、吸う。赤ん坊が、母親の乳を飲むように。
その行為にあたしは悲鳴をあげる。
ただでさえ敏感になっていた乳首が、強く吸われたことで、皿に血液が集中して固く突き出してくる。
結果、よりいっそう感度があがってしまう。
そこを、さらに強く吸われる。
舌先でくすぐられる。
唇で咬まれる。
「――――っっ!」
あたしは乳首への愛撫だけで達しそうになっていた。精神的な昂ぶりのせいもあるのかもしれないけれど、乳首を口で愛撫されるのは、女性器への愛撫と変わらないくらいに気持ちよかった。
また、すっかりその気になってしまう。
もっともっと気持ちよくなりたい、と思ってしまう。
同じくらい、玲を気持ちよくしてあげたい、と思ってしまう。
乳首を吸わせたまま、手を、達したばかりの玲の下半身へと移動させた。
あれだけ射精したのに、そこは、はちきれそうなほどに大きく、固く、熱くなっていた。
手で、握る。
上下に、動かす。
「も……もっと……する?」
うなずく玲。
「あたしも、もっと、気持ちよくしてくれる?」
二度、うなずく。
あたしは身体を離して、玲の手脚を縛っていた紐を解いた。
自由になった玲の顔の上に、また、胸を押しつける。
玲はすぐに、さっきまでの行為を再開してくれた。
同時に、一方の手が、あたしの下半身に伸ばされる。下着の中に潜り込んでくる。
もう一方の手が、舐められていない方の胸の乳首をつまむ。
あたしも、玲の下半身に手を伸ばす。
熱い玲の分身に指を絡める。
もう、手で触れていることさえ気持ちよかった。
触れられることは、もっと気持ちよかった。
「――――――っっっ!」
とろけるように濡れた膣に指が挿入され、あたしは歓喜の悲鳴をあげる。
よほど昂っていたのだろう。それから一分と経たないうちに、また絶頂に達してしまった。
だけど、もちろん、それで終わりにはならない。
玲に何度もいかされて。
玲を何度もいかせて。
結局今日も、母さんが帰ってくるまでこの気持ちのいい行為に耽ってしまった。
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