第3章【7】

 玲の太腿に手を置く。ぴくっと震える。
 スカートの中に手を滑らせていく。
 そこは、もう、
「……なぁに? もう固くなってるんじゃない? レイってばやらしー」
「それは……セイがエッチな顔してるから」
「ば……ばかっ!」
 固く反り返っている玲の分身をぎゅっと握る。
 一瞬、玲の表情が歪む。
 すぐに力を抜いて、優しく擦るように手を上下させる。
「あっ……セイ……ちょっ…………こんなトコで……」
 他の人に聞かれないように……という配慮か、蚊の鳴くような声。
「気持ちイイの? もっと声出してもいいんだよ?」
 手に少しだけ力を込めて、動きを速める。玲がびくっと震える。
 バスの中に他の乗客は三、四人。それも後ろの方にはいない。声を出さなければ、最後尾でちょっとくらいエッチな遊びをしていても気づかれることはあるまい。
「んっ……くっ……ぅっ!」
 玲は眉間に皺を寄せて、唇を噛んで、声が出そうになるのを堪えている。だけどあたしの手の中のものは、もう限界が近いことを示していた。
 映画館からここまで、あたしにさんざんセクハラしてきたのだ。玲だって昂奮していないわけがない。あたしに対する悪戯が、今、自分の首を絞めている。
「……もう、いっちゃいそうなんじゃない? いいよ、出しちゃえば? でも、匂いでバレるかもねー」
 生まれて初めて男の子を射精に導いてからまだ三日目。だけど昨日、何度も繰り返したことだ。男の子が達する時の気配はわかる。
「セイ……やめ……」
 玲の表情を窺いながら、もう本当に限界ギリギリ、ってところで手を放した。玲が大きく息を吐き出す。
「っ……く……ふぁぁ……」
 なんとか持ちこたえたようだ。先端から、透明な粘液が滲み出ている。
 玲が落ち着くまで一分間ほどそのままにして、
「……っセ……ぃ」
 また、握った。
 すぐに、表情が歪む。込み上げてくる快感に必死に耐えている。
 今度はさっきよりも少しゆっくりと手を動かして、じわじわと快感を高めていく。
 玲の呼吸が荒くなっていく。
 顔が紅くなって、汗ばんでくる。
「……シャセイ、したい? させてあげようか?」
 少しだけ、手に力を込める。刺激を強くする。
「や……めて、セイっ!」
 玲がどのくらい昂っているか、自分のことのように感じる。また射精寸前のところで手をとめた。
 ぎりぎりのところで踏みとどまった玲が深呼吸する。
 少しだけ休ませて、また手を動かす。
 すぐにまた反応する。
 何度も、何度も繰り返す。
 だんだん、達しそうになるまでの時間が短くなってきた。玲はもう泣きそうになって、目に涙を浮かべている。
 それでも、許してあげない。
 何度も、何度も繰り返す。
「……もう、大丈夫じゃない?」
 いつの間にか他の乗客はみんな降りてしまって、あたしたち二人だけになっていた。家の近くのバス停までもう少しだ。
 今度こそ手加減なしで、手の動きを加速する。
「シャセイ、しちゃえば?」
「で、も……」
「いいから」
 玲ってば、もう、息も絶え絶えって感じ。
 さすがにやりすぎたかもしれない。少し可哀想になってくる。
 イキそうなのに、イキたいのに、イケない。そんなぎりぎりの状態を何度も繰り返されて。
 これが自分だったら、気が狂ってしまいそうだ。
 だから、もう、許してあげる。
 焦らすためではなく、射精に導くために手を動かす。
 しかし玲はバスの中で……ということに抵抗があるのか、まだ必死に堪えている。
 その耳元で、息を吹きかけながらささやく。
「大丈夫だから、……出して」
 同時に、手の中に熱い液体が迸った。
 二度、三度、大きく脈動する。手のひらからこぼれ落ちそうなほどに大量の精液が噴き出してくる。
 それがようやく収まった直後、下りるべきバス停の名を告げる車内アナウンス。
 慌てて、手の中のものを口に含み、一滴残らず舐めとった。
 飲み下している余裕はない。口に含んだまま、鞄から定期入れを取りだす。
 玲は慌てて下着とスカートを直している。
 バスから降りるために運転手さんの横を通り過ぎる時には、さすがに少し早足になった。

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