第1章【6】

 サイズに関する疑問と違和感はともかくとして、初めて触れる男性器の感触はちょっと楽しかった。
 なめらかな手触り。
 手脚よりも体温が数度高いのではないかと思われる温もり。
 独特の固さと弾力。
 掌に伝わってくる感触がなんだか気持ちいい。
 先端部の少し柔らかくてなめらかな感触が特に心地よい。
 握った手を軽く動かすと、びくっびくって反応するのも面白い。
 そしてなにより、
 刺激を加えた時の玲の顔が、すごく可愛らしくて、かつ色っぽい。
「あっ……あ、はぁっ、やっ……だ……め……、んんっ、く……ぅん!」
 切ない吐息が耳をくすぐる。
 あたしにそっくりな顔が、すごくエッチな表情を見せている。
 そのことがあたしを興奮させる。
 この声をもっと聞きたい、この顔をもっと見たい。そんな想いで、玲のペニスを握った手を夢中で動かしていた。
 だんだん、身体が熱くなってくる。
 全身が汗ばんで、息が荒くなる。
 頭がくらくらしてくる。
 あたし、興奮している。
 玲に対してしている行為に。
 そしてなにより、玲にされている行為に。
 スカートの中で動いている玲の手。
 それはもう下着の中にまで入り込んで、女の子がいちばん気持ちよくなる部分で指が蠢いていた。
 下着越しにじゃない。直に触れられている。
 そして、あたしは感じている。
 もう誤魔化しようもない。
 濡れている。
 それも、すごく。
 普段のひとりエッチよりもずっと多く、エッチな液を滴らせている。
 割れ目の中はぬるぬるのとろとろだ。
 これ以上はないくらいに濡れて火照っている敏感な粘膜を、玲の指がくすぐるように擦っている。
「ぁっ……んっ、あぁんっ……ん、ふぅんっ」
 指の動きに合わせて、唇からは甘い嗚咽が漏れてしまう。
 玲の喘ぎ声とそっくりな声。いや、玲の声があたしに似ているというべきだろうか。
 エッチな声。
 いやらしい声。
 こんな恥ずかしい声、出したくないのに。
 なのに、抑えようとすればするほど、嗚咽がこみ上げてくる。
 気持ちいい。
 気持ちイイ。
 自分でするより何倍もいい。
 それは多分、自分の指で脇腹をつついてもさほどくすぐったくないけれど、他人に同じことをされたら跳び上がるほどくすぐったいのと同じことだろう。
 その上、実の弟――それも女の子の姿の――とエッチなことをしているというアブノーマルなシチュエーションが、あたしを昂らせている。その精神的な昂りが、よりいっそう性感を高めているようだった。
 跳び上がりそうになるほど、気持ちいい。
 失神しそうになるほど、気持ちいい。
「やっ……あんっ、あっあぁっ!」
 あたしの声が大きく、甲高くなるにつれて、それに誘われるように指の動きが激しくなっていく。
 そのせいで、もっと気持ちよくなってしまって。
 もっと声が大きく、いやらしくなってしまって。
 すると、その声に促されるように指がもっと激しく動いて、あたしを刺激して。
 それは、快感の連鎖反応。
 加速度的に高まって、臨界点を超えていく。
 
 ヤ……バ……い……
 
 これまで経験したことのない、想像すらしたことのないほどの気持ちよさ。
 頭の中が、目の前が、真っ白になる。
 
 このまま、じゃ……もう……
 
「あぁっ! あっ、あぁーっ! レ……イぃっ……あぁっ!」
 半ば無意識のうちに、手に力が入る。
 それが意識をつなぎ止めていくための命綱でもあるかのように、しっかりと掴む。
 自分がなにをしているのかもわからなくなって、ただ無我夢中で手を動かす。
「あぁーっ! セ……イっ、そ……んなに……あっ! はぁあっ!」
 目の前に、大きな口を開けて喘いでいる玲の顔がある。
 あたしも同じ顔をしてる。
 姿見に並んで映っている、ふたつのエッチな顔。
 急に霧が濃くなるように視界が真っ白になって、それもすぐに見えなくなる。
「あ……あぁぁっ、あぁぁ――っ!」
 一瞬の浮遊感。そして、夢の中で落ちていくような感覚。
「う……あぁっ、あぁっ、――っ!」
 ひときわ大きな玲の声。すぐ耳元で叫んでいるはずなのに、なぜか遠くから聞こえた。
 手の中のものが大きく脈うつ。
 朦朧とした意識の片隅で、手に、熱いお湯でもかかったような感覚があった。

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