第1章【3】

 スカートの中……下着は、さすがに男物のままで着替えさせてはいなかった。
 あたしの手は、その、前の部分をまともに押さえる形になっていた。
 薄い生地を通して、掌にはっきりと感じる感触。
 そこに、あたしには……女の子にはありえない器官が存在することを伝えてくる。
「あ……」
 思わず、そのまま動きを止めてしまった。予想外の突然の出来事に、どう対応すればいいのかわからなくなっていた。
 玲も驚きの表情で固まっている。
 すべての物音が消える。まるで時の流れが止まったかのように、二人とも微動だにしなかった。
 ただひとつ――あたしの手に伝わってくる感触を除いて。
 最初、気のせいかと思った。
 だけど違う。
 感触が変化している。
 手の中のものが、存在感を増している。
 それが意味するところを理解するまでには、しばらくの時間を必要とした。
 五秒、十秒、あるいはもっと長い時間だったのか。
 掌に伝わってくる感触は、最初に触れた時とはまったく別のものに変化していた。
 止まっていた時計が動き出す。
「……あ……と、ちゃ、ちゃんと男の子だね。…………って……、な、なに大きくしてンのよっ!」
 あたしは耳まで真っ赤にして叫んだ。
 それがエッチの時には固くなって大きくなるということは、知識では知っている。ネットで見つけた無修整の写真や動画を見たことはある。
 だけど実際の経験はない。今のところ彼氏もいない。あたしはまだバージンだ。
 だから現実味のある話じゃなかった。
 物語の中にだけ存在するかのような感覚。それが突然、現実となって出現した。
 心底びっくりしていた。
 こんな、ちょっと触れただけで大きくなるなんて。
 それも、こんなに大きくなるなんて。
 しかも……
「じ、実の姉に触られて大きくなるなんて、レイってば変態っ?」
 恋人でもなんでもない、単なる姉弟。
 ちゃんと血のつながっている、十五年と数ヶ月を一緒に暮らしてきた家族。
 なのに触られて大きくなるなんて。
 男性器が勃起するのは、性的に興奮してい時……のはず。つまり玲は、実の姉を性の対象と見ていることになる。
「なっ、なんでだよっ!」
 玲が真っ赤になって反論する。
「セイがいきなり触るからじゃん! そんな、刺激されたら、姉とかなんとか関係なしに反応するに決まってるだろ!」
 そういうものなのだろうか。
 男性経験のない女子高生にとってはよくわからない世界だ。
「つか、いつまで触ってるんだよっ! 実の弟の股間触ってるなんて、セイこそ変態っぽいじゃん」
「あ……」
 そう。
 なんだかんだ言いながら、あたしは玲に触れたままだった。離れるタイミングを逸してしまった上に、その感触がなんだか不思議で興味深かったから。
「な、なによっ! こんなに固くしてそんなこと言っても、説得力ないよ!」
 わざと、手を強く押しつけてやる。
「な……なんだよ、セイだって触られたら感じるだろ!」
「そ、そんなことあるわけないじゃない!」
「じゃあ、試してみる?」
「え?」
 言わんとしていることを理解する間もなく、玲の手があたしのスカートの中に入ってくる。
 そして……
「――っ!」
 下着の上から、触られてしまった。

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