いつも宏樹におんぶに抱っこの生活を送っている私にとって、たとえ一週間とはいえ、自分のことはすべて自分でやらなければならない生活というのはかなりの負担に思えた。
だけど仕方がない。
宏樹は明日から修学旅行で、帰ってくるのは次の週末だ。ちょうど同じ時期に母も海外出張ということで、月曜から金曜まで家には私ひとりだった。
母も宏樹も心配している。特に宏樹は修学旅行をやめてもいいと言っていたが、高校の修学旅行は一生に一度、私のために行かないなんてばかげている。
一週間くらい、一人でも多分なんとかなる。
食事はレトルトでもコンビニ弁当でも外食でもいい。
掃除や洗濯は一週間くらい適当にやっても死にはしない。
きちんとやらなければならないのは入浴くらいのものだ。それなら時間をかければ一人でもなんとかなるだろう。風呂掃除はスプレーしてシャワーで洗い流すだけの洗剤がある。
そう考えれば大きな問題はないはずだった。
もちろん不安はある。
ずっと宏樹に頼りっきりだったのだ。
以前は、自分のことはできるだけ自分でやろうと頑張っていた時期もある。だけどいつの間にかすっかり宏樹に甘えるようになっていた。
いいことじゃない。
それはいいことじゃない。
宏樹に頼りすぎること。
宏樹と親密すぎること。
実の姉弟としてはけっして褒められたことではない。
垣崎がいなくなってからおよそひと月。
表向き大きな変化はないが、やはり私たちの関係は以前とまったく同じではなかった。
以前より少しだけ、宏樹が優しくなった気がする。
以前より少しだけ、接触が増えた気がする。
垣崎のことと関係があるのかどうかもわからないし、ほんの微かな変化ではあるけれど、違いは確かに存在する。
昨日、久々に宏樹と一緒に街へ出かけた時。
ショーウィンドウに映った自分たちの姿を見て少し愕然とした。
杖を使わず宏樹の腕につかまって歩く私の姿。それはまるで腕を組んで歩く恋人同士のように見えた。
宏樹も以前ほどには仏頂面ではなく、私も楽しそうに笑っていた。
いけない。
こんなのいいことじゃない。
接触しすぎ。
甘えすぎ。
あの日垣崎が指摘した通り、私は確かに甘えすぎだ。
それは多分、宏樹が性的な接触をするようになってきた頃からだろう。無意識のうちに、その代償としていくら甘えてもいいつもりになっていたのだ。
この機会に少し自立しなければいけない。
そんなことを考えながらも、私はいつものように口での奉仕を続けていた。
浴槽に浸かって、前に立った宏樹のペニスをくわえている。
今夜の宏樹は少し強引だった。
両手で私の頭を押さえ、固く反り返った男性器で口を貫き、腰を前後に動かしている。
それでも初めての時のような一方的な陵辱ではない。一応は私が苦しくないように気を遣っている。私の方もあの頃よりはずっと慣れて、多少の動きには対応できるようになっていた。
腰の動きに合わせて舌を絡め、強く吸い、あるいは内頬を押しつける。
手で根本をしごく。
一度深く打ち込まれた後、口から引き抜かれる肉棒。白い飛沫が顔に降り注ぐ。
ぬるっとした粘液が頬を流れ落ちていく感触。鼻先で脈打っているものに唇を寄せ、中に残った精液をちゅっと吸い出した。
宏樹の手は、まだ頭を掴んでいる。そのまま腰を突き出してくる。固さを失っていない男性器が喉まで押し込まれる。
もう一度させたいのだろうか。いつもはたいてい一回、多くて二回なのに、今夜はもう三回目だ。
明日からしばらくできない分、今夜まとめてしておこうとでもいうのだろうか。
さすがに疲れてだるかったけれど、宏樹の手は頭をしっかりと掴んだままで解放してくれる様子はない。
他にどうしようもなくて、私は四回目の奉仕を始めた。
本当はいいことじゃない。
姉弟で、こうして毎晩当たり前のように性的な関係を持つなんて。
まだ最後の一線は越えていないとはいえ、その事にたいした意味があるとも思えなかった。
いけない。
こんなのいいことじゃない。
宏樹がいないこの機会に少し自立しなければ。
……そう思っていたはずなのに。
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