お兄ちゃんとあたしは、夕方までの数時間、そのままベッドの中で抱き合っていた。
あたしは心身ともに疲れ切っていて、動く元気はなかった。
お兄ちゃんはあたしの身体を優しく抱きしめてくれていた。
なんだか気怠くて、眠くて。
先刻までの激しい行為が、夢だったように思えてくる。だけどじんじんと痛みの残る下半身と、血で真っ赤に染まったシーツは、紛れもない現実だった。
帰りは、お兄ちゃんが家まで送ってくれた。
あたしの自転車をお兄ちゃんが運転して、あたしは後ろに乗っていた。
サドルに触れるあの部分が、まだずきずきひりひりと痛くて、おまけに下半身に力が入らなくて、自分で自転車に乗れるような状態ではなかったのだ。
それに、もっとお兄ちゃんに甘えたい気分だったから、この申し出は嬉しかった。
自転車に乗って、後ろからお兄ちゃんに抱きついて身体を密着させていると、とても幸せだった。まだ治まらない痛みですら、幸せの証に思えてくる。
もう、子供っぽい自分の身体のことなんて、気にならなかった。
別に、バージンじゃなくなったからといって、いきなり大人になれるわけじゃない。
帰る前、シャワーを浴びる時に洗面所の鏡で自分の裸を見た。それは以前となにも変わらない、子供っぽい身体だった。
お兄ちゃんはいろいろと優しい言葉をかけてくれたけれど、あたしの体型が子供っぽいのは事実だ。女の子の部分だって、お兄ちゃんをちゃんと受け入れるにはまだ幼いんだって、いやというほど思い知らされた。
それでも、お兄ちゃんがあたしのことを好きだっていうのは、信じていいと思っていた。ふと思ったけれど、もしかしたらお兄ちゃんは、少しロリコンなのかもしれない。
それでも、気にならなかった。
たとえお兄ちゃんがロリコンで、だから子供っぽいあたしが好きなんだとしても、ぜんぜん気にならなかった。
本当にそうなら、無理に大人になんかならなくてもいいやって思う。
だって。
わかってしまったから。
あたしが、子供っぽい自分を嫌いだったのも。
早く大人になりたかったのも。
全部、お兄ちゃんの傍にいたかったから、お兄ちゃんに相応しい女になりたかったからなんだって、わかってしまったから。
だから、もういいんだ。
あたしのポケットの中に、ひとつの鍵がある。
部屋を出る時にお兄ちゃんがくれた、部屋の鍵。
いつでも来てもいい。時間が許す限り、できるだけしょっちゅう来て欲しい。
そう、言ってくれた。
それは、あたしの悩みを全部消し去ってしまった、魔法の鍵だった。
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