あたしの部屋の大きな鏡に映っているのは、同じ顔をした二人の綺麗な女の子。
着ているものは同じ女子校の制服。
身長も、並んで測らなければわからない程度の差。
女子高生の平均よりはやや高めで、脂肪の少ないすらりとした身体つきもそっくり。
肩よりも少し長い柔らかそうな髪型も同じなら、少し驚いたように目を見開いている表情も同じ。
鏡のこちら側と向こう側、同じ女の子が合わせて四人いる。
知らない人が見たら、一卵性双生児としか思えないだろう。
確かに、血縁関係はある。
しかし一卵性双生児ではない。人間である以上、それは絶対にありえない。
あたしは、冗談半分で自分がしでかしたことの結果に驚いて言葉を失っていた。
隣の子も同様に驚いていたが、やがてその頬が恥ずかしそうに朱に染まってくる。
「いや、まあ、あたしとほとんど同じ血が流れてるんだし、綺麗になるだろうとは思ってたけど……」
けど
けど……
これはいくらなんでも、できすぎではないだろうか。
「……ねえ、レイ?」
あたしは、隣の『女の子』の顔を覗き込んで言った。
「あんた、本当に……」
事情をすべて知っていても、自分の目でその過程を見ていても、やっぱり信じられない。
「…………あんた、本当に男?」
「……そうだと思ってたけど、これを見ると自分でも自信がなくなってきた……って、ンなわけあるかっ!」
ノリツッコミ。手の甲があたしの胸を叩く。
……そう。
あたし、浅宮静(あさみや しずか)の隣に立って姿見に映っているのは、双子の『弟』の玲(あきら)だった。
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