incest with myself

by 西崎やまねこ

 その夜――
 私は、生まれて初めての〈幽体離脱〉というものを体験していた。
 自分の部屋で寝ていたはずなのに、気がつくと、ふわふわと天井近くに浮かんでいるように感じた。手を顔の前にもってきても、自分の姿は見えない。いや、そもそも腕を動かしたという感覚もない。
 周囲を目で見ているというよりも、意識で直接感じているようだった。五感すべてがひとつに混じり合ったような、不思議な感覚だ。
 今いるのは、自分の部屋ではなかった。いつの間にか壁も通り抜けていたのか、隣の、兄貴の部屋にいた。
 時刻はもう深夜のはずだけれど、大学生の兄貴はまだ起きていて、机の前に座ってパソコンに向かっている。
 そんな兄貴の後ろ姿を見ていて、ふと、悪戯心が膨らんできた。なにか心霊現象でも起こして、兄貴を驚かせられないだろうか?
 移動しているという感覚はなかったけれど、意識を向けただけで兄貴の背中が近づいてきた。ディスプレイに私の姿が映って、振り返っても誰もない――ということができれば面白そうだけれど、今の私って鏡に映るんだろうか?
 可能性は低そうだけれど、とりあえず試してみようということで、背後から兄貴の身体に腕を回して、肩の上に顎を乗せるような体勢をとろうとした。

 ――ところが。

 一瞬の、吸い込まれるような感覚。
 気がつくと、私は、兄貴の〈中〉にいた。
 今までの、肉体の感覚がまったくない状態ではない。普通に身体が動かせる。ただし、動くのは兄貴の身体。
 立ち上がってみる。いつもより床が少し遠い。
 自分の手を見る。見慣れた手よりもひとまわり以上大きな、力強い手。
 どうやら私は、兄貴の身体に〈憑依〉してしまったらしい。
 だとすると、兄貴は今どうしているのだろう?
(おーい、兄貴? 聞こえてる?)
 心の中で呼びかけてみる。しかしなんの返事もない。近くに兄貴がいるような気配もない。
 もしかして、私の身体の中に入っているなんてことはあるだろうか? 男女で精神と肉体が入れ替わるなんて、マンガとかではよくある話だけれど。
 部屋を出て、自分の部屋へと向かう。
 ドアを、そっとノックしてみる。
 返事はない。
 少しだけドアを開けて、隙間からのぞき込む。誰かが起きている気配はない。
 部屋の灯りをつけると、ベッドの上で〈私〉が眠っていた。
 ただし、とんでもない姿で。
 パジャマは上だけを羽織っていて、しかもボタンは全部はずれて胸が露わになっている。
 下は、脱いだパンツが足首に引っかかっている。
 もっとも、この姿は自分でやったことだ。寝る前に、いつものようにひとりエッチをしていて、それがすごく気持ちよくて、イった後、心地よい脱力感に包まれてそのまま眠ってしまったのだ。
 よくあることだけれど、こうして自分の姿を――文字通り――客観的に見て、少し反省した。
 これはさすがに、あまりにもはしたない。いつ、両親や兄貴に見られるかもしれないのだから、眠る時にはせめてパンツは穿いておかなければ。こんな痴態を見られたら、恥ずかしくて生きていられない。
 そんなことを思いながら、改めて自分の姿を観察する。
 自分を外から見つめるというのは不思議な体験だ。鏡とは違って左右が逆転していない、見慣れない姿に違和感を覚える。そもそも、鏡にしろ写真にしろ、自分の寝姿を見る機会などそうそうあるものではない。
 生まれて初めて、自分を、本当の意味で外から見ている。見慣れないが故に、それが自分だという意識は希薄だった。
 まじまじと、眠っている〈私〉を見つめる。
 ほとんど裸同然、夏場とはいえ風邪をひきそうな姿だ。 せめてパジャマのボタンくらいは留めておこうと手を伸ばす。
 そこで、ふと、気になった。
 私の身体は、本当に眠っているだけだろうか?
 まさか、死んだりしていないだろうか?
 心配になって、ボタンを留めようとしていた手を、そのまま左胸に当てた。
 
 ……トクン、トクン
 
 大丈夫。
 手のひらに、静かな、しかし確かな鼓動が伝わってきた。
 胸がゆっくりと上下している。
 それを確認して、ほっと安堵の息を漏らした。
 安心すると、今度は別のことが気になった。
 この、手の中にすっぽりと収まっている、胸の膨らみ。
 兄貴の手が私よりずっと大きいことを考慮しても、やっぱり少し小ぶりではないだろうか。細いウェストは自慢だけれど、その分、つくべき箇所の脂肪もあまりついていない。
 もう少し大きくてもいいのに。
 まだ中学生だから、発育はまだまだこれから――と言いたいところだけれど、同じくらいの身長のクラスメイトと比べても、やや見劣りするような気がする。私もそろそろ、お色気が欲しい年頃だ。
 そんなことを考えながら、胸のふくらみに指を滑らせる。
 小ぶりではあっても、形は悪くない。
 なだらかなふくらみの頂にある乳輪も、小ぶりで淡いピンク色。その斜め下に、乳首を頂点とする傾いた二等辺三角形を描くように、小さなホクロがふたつ。
 他にはホクロも染みもなく、肌は白くて滑らか。これでもう少し大きければ、完璧なおっぱいといえたのに。

 そこで、はっと我に返った。
 これって、ちょっとヤバくない?
 今の状況って、傍目には眠っている中学生の妹を裸にして、その胸に悪戯している兄の姿だ。両親に見られたら、兄貴の人生は終わりかもしれない。
 もっとも、今日に限っては幸いその心配はない。両親は、遠縁の親戚の法事ではるばる九州へ行っていて、今夜は帰らない。だからこそ私も安心して、普段よりちょっと激しいひとりエッチを楽しんでいられたのだ。
 せっかくの機会だから、このシチュエーションを楽しむとしよう。
 実際、これはちょっと楽しかった。
 自分の身体を外側から触るなんて、普通はできない体験だ。ひとりエッチで触るのとは、また違った感覚がある。
 触り慣れているはずの自分の胸が、他人のもののように感じる。だけど、その形は紛れもなく私の胸だ。
 不思議と、いつもよりドキドキしてしまう。鼓動が速くなって、顔が熱い。
 
 そして……
 
「……え? なに、これ!?」
 いつの間にか、私の――兄貴の身体の――ジーンズの前が膨らんで、痛いくらいに窮屈になっていた。
 これって、つまり……
「あ、兄貴のアレが……ぼ、勃起、してンの? なんで?」
 初めての体験に、混乱してしまう。
 状況を、落ち着いて考えてみよう。
 兄貴にとっては実の妹とはいえ、それなりに可愛い女の子。
 それが、全裸同然の姿で眠っている。
 その胸を触っているのは、健康な大学生男子。
 ――これだけを見れば、大きくなるのはむしろ当然だ。
 性的に興奮すると、男の人のアレは固く大きくなる――そのくらいのことは、中学生の私だって知っている。
 この、兄貴の身体の反応は、むしろ自然なことかもしれない。
 だけど、今、兄貴の中にいるのは私。別に、女の子の裸に欲情するような趣味はないはず。
 なのに、この反応。
 兄貴の意識はない状態でも、肉体が勝手に反応してしまっているのだろうか。
 初めて経験する男の生理に、私は取り乱していた。心臓が、苦しいくらいにバクバクいっている。
 ジーンズのファスナーを下ろして、その、大きくなったものを――おそるおそる――取り出してみた。
「――っ!!」
 思わず、息を呑む。
 もちろん、男性のアレが大きくなった状態を実際に目の当たりにするのは初めてだ。
 男性経験のない、女の私にとっては、びっくりするくらいに大きかった。見ているだけで怖くなるほどだ。
 こんなものが身体から生えているなんて、なにか変。男の人って不思議。
 長さといい、太さといい、こんなに大きなものが女の子の中に入るなんて、それも信じられない。
 見た目なんて、凶悪といってもいい雰囲気だ。
 赤黒くて、反り返って上を向いて、鼓動に合わせて小さく脈打っている。
 これが、男の人の性器。おちんちんとかペニスとか呼ばれる代物。
 世の中の男性がみんなこんなものを持っているなんて、にわかには信じられない。
 お父さんにもこんなものがあって、お母さんとセックスして、私や兄貴が生まれた。その事実に間違いはないのに、なんだか現実味がない。
 こんなグロテスクなもの――そう思うのに、なぜか視線を逸らすことができなかった。
 恐る恐る、そっと触れてみる。
「……んっ!」
 気持ち、よかった。
 一瞬、身体が震えた。
 ひとりエッチでクリトリスを刺激したときの感覚に少し似ている。そういえば、女の子のクリトリスと、男の人のおちんちんは、発生学的にはもともと同じ器官だったはずだ。
 だけどサイズが桁違いで、ずっと頑丈な印象を受ける。女の子の繊細さとは無縁な器官だ。もっと強い刺激でも平気そうで、よく濡らしてそっと触れないと痛いクリトリスとは違う。
「あ……っ」
 むしろ、ぎゅっと握って強く擦るくらいの方が気持ちよかった。
 兄貴の大きな手にもあまるような、大きく太い肉の塊。熱くて、固い弾力が伝わってくる。
 こんなに固い部位なのに、中に骨がないなんて嘘みたいだ。そういえば、熊のペニスには骨があるという話を聞いたことがある。だとしたら同じ哺乳類同士、実は人間にもあるのではないだろうか。
 そんなことを考えながらも、手は握ったペニスを擦り続けていた。
 男の子って、自分でする時はこんな風に擦るはず。
 ――うん。
 これって、けっこう気持ちいい。
 すごく興奮する。
 私は今、男の人のおちんちんを握って、呼吸を荒くしながら擦っている。
 見た目には兄貴が自分でしている形だけれど、精神的には、女の私が、兄貴のものを手で愛撫しているのだ。これが自分の身体だったら、まるでアダルトビデオみたいではないか。
 その光景を想像しただけで、顔が熱くなる。恥ずかしすぎて死にそうな気分だ。
 恥ずかしいといえば、今の状況。
 裸で眠っている妹を前に、男性器を露わにしてオナニーしている兄。先刻よりもさらにヤバい姿だ。
 だけど、手は止まらない。
 気持ちよくて、やめられない。
 視覚も、私を昂らせていた。目の前には、裸同然の私がいやらしい姿で寝ている。ひとりエッチでイった後だからだろうか、単に裸だからという以上のエロさが感じられる。
 見ているだけで、異常なくらい興奮してしまう。たぶん、私の裸に兄貴の身体が反応して、それに私の意識もつられているのだろう。こんな、無防備に寝ている女の子を前にして、健康な若い男性が無反応でいられるわけがない。
 私が男だったら、問答無用で襲っていたかもしれない。
「――!」
 その時、とんでもないことを思いついてしまった。
 ベッドに上がる。
 仰向けに寝ている私の、お腹の上にまたがるような体勢になる。
 そして、私の華奢な手を取って、股間で固くなっているものを両手で握らせた。
 その上から、兄貴の大きな手で包み込み、先刻と同じく前後に擦るように動かした。
「……んっ」
 細い指が絡みつく。華奢で柔らかな女の子の手のひらの感触は、兄貴の手で触ったときよりも気持ちよかった。
 いっそう昂ってくる。手で擦るだけでは我慢できなくなって、自分でも腰を前後させる。
 もっと、もっと、刺激が欲しい。
 もっと、もっと、気持ちよくなりたい。
 手を開いて、胸の膨らみに擦りつけてみた。
 まだ中学生の私の胸には、パイズリとかいう行為ができるほどのボリュームはない。それでも、両側から寄せて上げてなんとか谷間を作り、手と胸で挟み込むようにして擦りつけると、手だけよりもさらに気持ちよくなってきた。
 どんどん、よくなっていく。
 身体の奥から、なにかが、来る。
 これってたぶん、イキそうな感覚――本能的にそう感じた。
 呼吸がさらに荒くなる。身体が汗ばんで、全力疾走しているかのように鼓動が激しくなる。
 対照的に、ベッドに横たわる私の身体はまったくの無反応、人形のように眠っているだけだ。
 本当に眠っているのであれば、こんなことをされれば流石に目を覚ますだろう。だけど、今の私は『空っぽ』だ。〈私〉はここにいる。兄貴の中に。
 その間は絶対に、この身体が目を覚ますことはない。
 だから安心して、こうした性的な悪戯をすることができる。
 そしてなにより、これは私自身がしていることだ。
 ――そう。
 他者から見れば、兄が妹を襲っている図。だけどこれは、私が、自分の身体に対して悪戯しているだけ。いわばひとりエッチみたいなものだ。たとえ、どれだけ異常なシチュエーションだったとしても。
 そう自分に言い聞かせて、この状況を正当化する。
 そうでもしないと、やっていられない。冷静に考えたら、とんでもないことをしていることはわかっている。
 だけど、もう、やめられない。
 やめられないくらいに興奮している。
 もうすぐイキそうだ。
 たぶん、あとほんの何秒かで〈射精〉してしまう。兄貴の身体に染みついた記憶が伝わってくるのだろうか、そのことがなんとなくわかる。
 手の動きが、腰の動きが、勢いを増す。
 激しい動きに、ベッドのスプリングが軋む。
 もう、限界。
 なのに見おろせば、場違いなくらいまったく無反応な私の寝顔。
 その顔を見ていて、さらにとんでもないことを思いついてしまった。実体験などないのに、どうしてこんな発想が浮かんでしまうのだろう。
 これもやっぱり、兄貴の〈記憶〉の影響なのかもしれない。肉体を操っているのは私の意識だけれど、逆に、意識も肉体からの影響を受けているのではないだろうか。
 だから、こんな、男みたいなことを思いつく。
 もう本当に限界――ってところまで耐えて、いよいよという瞬間、寝ている私の顔の上に移動した。
 大きく反り返ったものを手で掴んで強引に下に向け、かすかに開いた唇に押しつける。
 胸よりもさらに柔らかな、唇の感触。
 もう一瞬だって我慢できなかった。そのまま力強く腰を突き出す。
 固いペニスが唇を割って、口の中に突き挿れられた。
「あぁっ!!」
 思っていた通り、いや、思っていた以上に気持ちよかった。
 歯が当たる、かすかな痛みの刺激すら気持ちいい。
 口の中の、温かく濡れた粘膜の感触。この、包み込まれるような感覚は、手や胸では味わえなかったものだ。
 それに、視覚的な刺激もすごい。
 私の唇には大きすぎるとしか思えないものが、強引にねじ込まれている。
 ただ「くわえている」というのではない。これはもう、口を「犯されている」としか表現できない光景だ。
 自分が犯されている光景を見つめている。自分が犯されている光景に興奮している。
 興奮すると、口を犯しているものはさらに大きく固くなって、よりいっそう刺激が増す。
 しかも……
「……んっ」
 その刺激は、下半身から伝わってくるものだけではなかった。
 感覚が、あった。
 私の、口に。
 それは、大きなものをくわえている感覚。
 弾力のある大きな熱い塊が、口の中に在る。舌を、内頬を、擦られている。喉を突かれている。
 兄貴の身体から伝わってくる感覚ではない。兄貴の口の感覚ではない。
 今の肉体の感覚ではなく、だけど確かに感じる。
 それは、私の意識に直に伝わってくるような感覚だった。
 抜け殻のような私の身体と、兄貴の中に在る私の意識。だけど、その間にはなんらかの繋がりが残っているのかもしれない。
 普通に自分の身体で感じる感覚よりは弱いもののようで、胸を触っているときには気づかなかったけれど、口の中の感触はさすがにわかる。
 大きなフランクフルトを頬ばっているときに似ている。
 私は今、男性器を、口に、含んでいる。
 だけど、不思議と嫌悪感はない。むしろ、どことなく心地よささえ覚えていた。
 知らなかった。口って、えっちな意味で「気持ちのいい」場所なんだ。
 だから、フェラチオなんて行為があるのかもしれない。男の人ばかりが気持ちいいわけじゃなく、くわえている女の方も気持ちいいのだ。
 これはもう、前戯なんかじゃない。口を使ったセックスだ。
 私は夢中で腰を動かしていた。
 動けば動くほど、兄貴の肉体が感じる気持ちよさが増していく。
 私の身体から伝わってくる気持ちよさも増していく。
 二倍、気持ちいい。
 ううん、二倍どころじゃない。これはきっと、足し算じゃなくて掛け算だ。
 存在を意識したせいだろうか、口の刺激がどんどん強くなっていく。
 それにしても、なんて不思議な体験だろう。
 私は、自分の口を犯している。
 私は、自分に口を犯されている。
 だけどその身体は、人形のように無反応のまま。
 自分が犯されている姿に、怖いくらいに大きな男性器に唇を貫かれている姿に、興奮してしまう。
 もう我慢できない。
 ペニスから感じる気持ちよさと、口に伝わってくる気持ちよさ。どちらも、それひとつだけで普段のひとりエッチよりもずっと気持ちがいいのに、ふたつ同時に襲ってくる。どちらかの快感が増すと、もう一方もより気持ちよくなってしまう。
 それに加えて、視覚からもたらされる精神的な快感。
 頭が真っ白になる。
 下半身が痺れる。
 もう、限界。
「……あぁっ!」
 思わず、腰を大きく突き出した。
 痛いくらいに激しく喉を突かれる。
 そこで、爆発が起こる。
 身体の中から、なにかが飛び出していく。
 口の中に、なにかが噴き出してくる。
 これまでの、ペニスが擦られる快感とはまた別の、内側からの刺激。おしっこが出るときの感覚にも似ているけれど、液体ではなく塊が飛び出していくような、大きな質感がある。
 これが、射精――
 真っ白になった頭で、ぼんやりと思う。
 二度、三度、四度。
 口の中のものが、大きく脈打つ。、その度に、液体と呼ぶには粘性がありすぎるものが噴き出していく。
 イって、しまった。
 自分の口を犯して。
 自分に口を犯されて。
 兄貴の肉体も、私の意識も、達してしまった。
 自分の口の中に、射精、してしまった。
 それも、びっくりするくらいにたくさん。
 口の中に、ねっとりとした感触が伝わってくる。液体というよりもゼリーに近いような感覚。絡みつくような粘りけもあるような気がする。
 熱くて、苦くて、生臭い。なのに、どういうわけかうっとりしてしまう。
 これが、男の人の、精液。
 美味しいなんて思えない。なのに、不思議といやじゃない。むしろ、病みつきになりそうですらある。
 大きく息を吐いて、腰を引いた。
 口を貫いていたものが引き抜かれる。
 反り返った男性器と、開かれた唇との間に、白っぽい半透明の糸がつながっている。唇の奥が、白濁液で満たされているのが見える。
 すごく、いやらしく感じる。見ているだけでまた興奮してしまいそうな光景だ。
 実際、股間のものはまるで勢いを失っていなかった。大きさも固さもそのままだ。
 兄貴の身体は、まだ、満足していない。
 本音をいえば、わたしも同じ。
 今の行為がすごく気持ちよかっただけに、より強く想ってしまう。
 もっと、したい。
 もっと、気持ちよくなりたい。
 そのためには、どうすればいいだろう。
 少し考えて、思いついた。
 私の身体の、口への刺激が伝わってくるのなら、他の部位への刺激もきっと伝わるのだろう。
 どこが、どんな風に感じるのだろう。
 いろいろと試してみるのもおもしろそうだ。
 仰向けに寝ている私の、顔の上にまたがっていた体勢から、添い寝するような位置に移動する。
 胸の上に顔を持っていく。
 小ぶりなふくらみ。滑らかな曲線を描いてきれいな形ではあるけれど、もう少し成長して欲しい。
 そんなことを思いながら、左の乳首に口づけた。
 かすかに伝わってくる、くすぐったいような感覚。
 やっぱり、実際に身体で感じる感覚よりは鈍いみたいだ。
 だとすると、気持ちよくなるためにはもっと強い刺激が必要だろう。
 今度は、乳首を口に含んでみた。まだ発育途上サイズの私にとって、こればかりは自分ひとりではできない行為だ。
 そして、吸う。
 これまで想像してきたよりも、意図的に強く。普通に意識がある時に他人にそうされたら、たぶん痛いだろう、というくらいに。
「あっ……」
 これは、イイ。
 はっきり、気持ちいいといえる感覚が伝わってきた。
 ひとりエッチで、自分の指で触ってみた時よりも、ずっと気持ちいい。他人の身体にそうされているからだろうか。それとも、指と口の違いだろうか。
 強く吸われて、引っぱられるような感覚。
 ちりちりとむず痒いような刺激。
 くすぐったいような、だけどそれだけじゃない、快感。
 強く吸いながら、舌先で乳首をくすぐる。
 唇で咬む。
 恐る恐る、軽く、歯を立ててみる。
 すぐに、そうした行為に夢中になった。
 胸を吸われるのはもちろん気持ちいいけれど、それだけじゃなく、吸う側にとっても心地よい行為だと気がついた。もしかすると、赤ん坊の頃の記憶が呼び覚まされるのかもしれない。
 自分の乳首を吸うことに夢中になるのもどうかと思うけれど、一応、今は肉体的は別人だからよしとしよう。
 もう一方の胸を、手で揉んでみる。意図的に、少し強く。乱暴にぎゅっと握るようなつもりで。
 普通だったら痛いくらいに力が込められていたと思うけれど、今はこのくらいの方が感じてしまう。
 乳房をぎゅうぎゅうと揉んで、乳首に軽く爪を立ててつまんで。
 しばらくそんな愛撫を続けて、左右を交代。右の乳首を口に含み、左の乳首を手で弄ぶ。
 そして、また、交代。
 何度も、何度も、繰り返す。
 繰り返すたびに、じわじわと昂っていく。
 昂るほどに、行為は激しさを増していく。
 激しくなればなるほど、感じてしまう。
 だけど感じれば感じるほど、物足りなくなってしまう。
 もっと、気持ちよくなりたい。
 もっと、気持ちいいコトしたい。
 もっと、エッチなコトをしたい。
 だったら……
 衝動のままに身体を移動し、自分の下半身へと顔を近づけた。
 淡い茂みの下にある、女の子の、いちばん恥ずかしくていちばん大切でいちばんいやらしい場所。
 間近でまともに見るのは初めてだった。女の子の身体の構造上、自分のそこを正面から見るのは難しい。好奇心から、鏡に映してみたり携帯で写真を撮ってみたりしたことはあるけれど、実際に生で目の当たりにするのはまたひと味違う。
 かすかに開いた、小さな割れ目。
 そこから、透明な粘液が滴っていた。
 濡れているのだろうか。
 私の身体は意識がないのに?
 意識がなくても、純粋に反射的な肉体だけの反応なのだろうか。それとも、肉体への刺激が私の意識に伝わってくるように、意識の興奮が肉体にも影響を与えているのかもしれない。
 顔を近づける。
 鼻腔をくすぐる、女の子の匂い。
 精液の匂いほどではないけれど、私を興奮させる匂いだった。
 指で、割れ目を拡げる。
 露わになる、肉色の粘膜。充血して赤みを増し、濡れて艶っぽく光っている。私の胎内へと続く小さな口から、かすかに濁った透明な粘液が溢れ出てくる。
 いやらしい光景だった。
 だからこそ、興奮してしまう光景だった。
 衝動のままに、そこにキスをする。
 そして、舌を伸ばす。
 舌に力を込めて、割れ目の中を、クリトリスを、舐める。
「――っっ!!」
 めちゃめちゃ、気持ちよかった。
 これまでで、いちばん気持ちよかった。
 こんなの初めてだ。これまで、ひとりエッチで経験したどんな快感よりも格段にイイ。
 割れ目全体を、舐め上げる。
 特にクリトリスは、舌先を引っ掛けるようにして強く刺激する。
 その度に息が止まる。全身が痙攣する。
 さらなる刺激を求めて、胎内へ続く入口に人差し指を押しつけた。
 粘液を溢れさせている小さな穴は、意外なくらいスムーズにその指を受け入れた。
 身体が、震える。
 自分の身体の内側に触れる感覚。まるで内臓に触れているよう。
 中は、すごく熱かった。私の平熱は三六度六分だけど、そんなものじゃない。前後する指の動きに合わせて滲み出てくる蜜は、まるでお湯のようだ。
 興奮する。
 私の意識はもちろん、意識が宿っている兄貴の身体も、これ以上はないくらいに興奮していた。
 意識の興奮に引きずられているのか、それとも単純に、女の子の性器を愛撫するという行為に肉体が反応しているのか、あるいはその両方なのか。とにかく、男性器は口を犯している時以上に勢いを増して、大きく、そして固くなっているようだった。
 激しくなる鼓動に合わせて、びくびくと脈打っている。
 まるで、それ自体が意志を持って、もっと気持ちよくなりたいと訴えているように見えた。
 私はもう、その器官から得られる快楽を経験してしまった。
 だから、抗えない。
 自分の肉体から伝わる快感だけではなく、この、兄貴の肉体でも同時に気持ちよくなりたいと思ってしまう。
 兄貴の肉体が気持ちよくなると同時に、私の肉体も気持ちよくなりたい。そうすれば、また、二倍気持ちよくなれる。
 今の状況で、その欲求を満たすことができる行為はひとつしかない。
 さすがにそれはヤバい――理性の片隅で、そう思う。だけど、気持ちよくなりたいという性欲はもう抑えられない。男の性欲と女の性欲、これもいつもの二倍。
 だから、抗えない。それがどれほど異常な、そして取り返しのつかない行為であるかを理性では理解していても。
 私は身体を起こすと、自分の身体の両脚を腕で抱えてその間に身体を入れると、下半身を突き出した。
 固く反り返っているものを、自分の割れ目に押しつける。
 小さな割れ目と、大きくて太い棒状の器官。見るからにサイズの釣り合いが取れていない気がする。だけどこれは、こうした行為のための器官なのだ。できないはずがない。
 そう考えて、下半身に力を込める。
 男性器の先端が、強く押しつけられる。
 だけど、うまく挿れられない。結果的に、割れ目が擦られる形になった。
 一瞬、頭が真っ白になる。
 舌よりもずっと大きくて、固い弾力のある器官による刺激。
 舐められるよりも気持ちいい。
 気持ちよすぎる。もう、我慢できない。
 指で、割れ目を拡げる。
 もう一方の手で、反り返っているものを押さえつけ、その割れ目に押し当てる。
 位置を、角度を、微調整する。
「……ぁ」
 先端が、少しだけ中に潜り込んだ。だけど、その先がきつい。そこには確かに、私の胎内に通じる通路があるのだけれど、入っていこうとしているもののサイズと、穴のサイズが、ずいぶん違っているように見えた。
 それでも、諦めはしない。
 たぶん、普通のセックスだったら、この先の挿入はすごく痛いに違いない。どう見ても、狭い入口を引き裂かんばかりに力まかせに無理やり押し込む形になってしまう。
 だけど幸い、今は生身の時よりも感覚が鈍い。特に、痛覚はほとんど感じなくなっている。
 だから、小さく一度深呼吸すると、一気に腰を突き出した。
「――っっ!! あぁぁっっ!!」
 最初に襲ってきた感覚は、痛みとか快楽とかではなく『衝撃』とでも表現すべきものだった。
 一瞬遅れて、兄貴の身体から、自分の身体から、快感が伝わってくる。
 すごい。
 すごく、気持ちいい。
 手や胸はもちろん、口よりも、もっと。
 限界まで大きくなったペニスが、熱く濡れた、柔らかな粘膜に絡みつかれ、包み込まれ、締めつけられている。
 狭い膣が、硬いペニスに無理やり押し拡げられ、擦られている。
 下腹部に視線をやると、まだ幼さの残る女性器が、太い杭に貫かれていた。
 いやらしいというよりも、グロテスクな光景だった。
 だけどやっぱり、興奮してしまう。女の、男の、どちらの本能も反応してしまう。
 幸い、痛みはほとんど感じなかった。挿入の瞬間、自分の身体からは少しだけ痛みを感じたけれど、それはむしろ気持ちいいといえるくらいの刺激だった。だけど、本来は泣き出すほどの激痛だっただろうと想像できる。
 兄貴の下半身からは、これまででいちばんの、純粋な快感だけが伝わってきた。
 手よりも、胸よりも、口よりも、もっとイイ。
 全体が柔らかく包み込まれて。
 腰を動かすと、ぬるぬるに濡れた粘膜に擦られて。
 私は本能のままに腰を振っていた。
 すごい。
 こんな感覚、初めてだった。
 私の身体から伝わってくるのは、棒状のもので貫かれているというよりも、なにか、大きな塊を挿れられているような感覚だった。
 苦しいような、熱いような、そんな感覚。
 限界ぎりぎり、裂けてしまいそうなくらいに引き伸ばされ、拡げられている。
 痛覚がほとんどない今の状態でこれでは、普通にしていたら我慢できないくらいに痛かったのではないだろうか。
 だけど今は、痛みよりも快感の方がはるかに勝っている。
 痛くない初体験でよかった――と安堵の息をついたところで、大変なことに気がついた。
 初体験、だ。
 初めての、セックス。これが、私の、初体験。
 ヤバい……ん、じゃない?
 初体験、してしまった。
 まったく心の準備もなしに、なんとなくノリと勢いで挿れてしまったけれど。
 今さら後悔しても手遅れなんだけど。
 いいんだろうか?
 こんな初体験で。
 健全な女子中学生の初体験としては、ちょっとアブノーマルすぎるのではないだろうか。
 私の身体は意識がない状態で。
 相手は実の兄貴で。
 だけどその中身は自分自身で。
 自分を犯して、興奮しているなんて。
 なにもかもが、普通じゃなさ過ぎる。
 もう、変態とか、そんな言葉では済まない気がする。
 兄貴の身体で、自分とセックスするなんて。
 ……自分?
 自分、自身?
 そうだ。
 私を犯しているのは、私自身。
 そう考えてみれば。
 見方によっては、これはある意味、ひとりエッチみたいなものかもしれない。
 普通よりもちょっとだけ過激な、ひとりエッチ。
 うん、そうだ。
 自分で、自分を気持ちよくしているんだから。
 これは、ひとりエッチ。
 だから、ノーカウント。
 これはセックスじゃない。
 膜の有無とか、問題じゃないし。
 うん。
 そういうことに、しておこう。
 そうじゃないと、こんな、その場のノリでセックスしてしまった自分の浅はかさに呆れてしまいそうだし、今していることに後ろめたさも覚えてしまう。
 そんなの、いやだ。
 いまさらやめられないし、やめたくないから。
 とても、気持ちいいから。
 兄貴の肉体が、感じている。
 私の意識も、感じている。
 肉体的には痛いはずだけれど、それは今の私にはほとんど伝わってこない。それよりなにより、ただただ気持ちいいだけだ。
 だから、いまさら中途半端な状態でやめたくない。
 だから、この行為を続ける言い訳が必要。
 だから、これはひとりエッチの延長だとしておこう。
 そうじゃないと、せっかくの気持ちのいい行為を心から楽しめなくなってしまう。
 これは、ひとりエッチ。私は今、すっごく気持ちのいい自慰を楽しんでいる――
 そう言い聞かせながら、腰を動かし続ける。
 深く、深く、いちばん奥まで、突き挿れる。
 普通に考えれば私の膣の奥行きよりも大きなものを、根元まで強引に押し込む。
 それが、気持ちいい。
 ペニス全体が包み込まれている。膣全体が刺激されている。
 そこから、先端ぎりぎりまで引き抜く。
 また、一気に打ちつける。
 肉体が、本能が、求めるままに動き続ける。
 小柄で華奢な自分の身体に、ずっと大きな身体の大学生男子の欲望をぶつける。
 手よりも、胸よりも、唇よりも、ずっとずっと気持ちいい。
 熱くて、ぬるぬるに濡れた粘膜はとても柔らかくて、絡みついてくる。それでいて、ぎゅうっと締めつけてくる。
 これ以上はないくらいに固くなって、はちきれそうなほどに膨らんだペニスが膣の粘膜に擦られると、頭が真っ白になるくらいに気持ちいい。
 それ以上に、私の肉体から伝わってくる感覚がイイ。
 膣がいっぱいに満たされ、拡げられている。
 身体の内側が、激しく擦られている。
 一度も触れられたことのない、深い深い部分まで感じている。
 これまでに経験したことのある、自分の指でちょっと触れる程度の刺激とは桁違い、別次元の快楽だった。
 激しい刺激が、すべて快感として伝わってくる。
 気持ち、よすぎる。
 もう、今にも達しそう。
 また、射精してしまいそう。
 それでも、必死に我慢する。まだ、ダメ。もう少しだけ。
 この、今まで感じたことのない気持ちよさを、もっともっと味わっていたいから。
 だけど……もう、限界。
 もう少し耐えようという意識を無視して、腰の動きが速く、激しくなっていく。
 呼吸が荒くなる。全身が汗ばんで、私の身体の上に汗の雫が落ちる。
 興奮しきっている兄貴の肉体とは対照的に、下になった私の肉体はまったくの無反応のまま。
 まるで等身大の人形のような姿で、犯されている。信じられないくらいに大きな男性器に貫かれている結合部から、紅い滴が滴り落ちている。
 ひどくエロティックな光景だった。無反応な私の姿は、むしろ激しく悶えるAV女優よりもいやらしく感じた。
 普通ではありえない光景だからこそ、かもしれない。
 これが眠っているだけなら、たとえどれほど熟睡していたって、こんなことをされたら目を覚ますだろう。だけど、今の私が目覚めることはありえない。私の身体は空っぽの抜け殻だから。中身はここにいるから。
 そんな不思議な展開に興奮して、無我夢中で腰を振っている。
 意識があったら痛くて泣き出してしまうに違いない、というくらいに激しく、小さな身体が壊れてしまいそうなほどに陵辱する。
 ただ本能のままに快楽を貪る。
 どんどん、気持ちよくなっていく。
 気持ちよくなるほど、さらに動きが激しさを増す。
 一気に、フィニッシュに向けて駆け上っていく。
「あっ、あぁっ、あぁっ、あぁぁっっ!!」
 機関銃のように激しいピストン運動。
 最後の一撃とばかりに、膣を突き破りそうなほどの勢いで突き挿れる。
 そこで、限界に達した。
 全身が痺れるような感覚。
 私の身体の、いちばん深い部分で爆発が起こる。
 口に出した時よりもさらに激しく、ゲル状の大きな塊が飛び出していくような感覚。
 身体の中が、熱い奔流で満たされている感覚。
 一瞬、気が遠くなる。
 びくん、びくんっ!
 私の膣内で、大きな塊がなんどなんども脈打っている。
 その度に、液体と呼ぶには粘性の高い物体が噴き出して、小さな膣をいっぱいに満たしていく。それだけでは収まらず、子宮にまで流れ込んでくる。
 気持ちよさのあまり、身体がぶるぶると震えている。何度も意識が飛びそうになる。
 いつまでも続くかと思われた射精がようやく治まったところで、大きく息を吐いた。
 全身から力が抜けて、自分の身体の上に覆いかぶさるように倒れる。
 ……すごい。
 すごく、気持ち、よかった。
 セックスが、こんなにも凄いものだったなんて、想像以上だ。
 すごく、よかった。
 ……あ、でも。
 膣内に、出してしまった。
 中出し、してしまった。
 ……大丈夫、だよね?
 我に返って、慌てて指を折って日数を数える。
 ……うん、大丈夫な日、の、はず。
 ほっと安堵の息を漏らす。
 女の子としてはなによりも気をつけなければならないことなのに、すっかり失念してしまうくらいに夢中になっていたのだ。
 ゆっくりと身体を起こす。私の身体を貫いていたものが抜け出る。
 拡げられていた膣口が収縮して、奥から、白い粘液が溢れ出てきた。
 初めての証である血が混じって、実際には白というよりもピンク色がかった色合いだった。
 割れ目から溢れ、お尻の方へと流れ落ちていく。
 紅く充血した粘膜。ほのかに桃色に染まった肌。その上を滑る白い粘液。エロティックな色彩の対比。
 見ているだけで、興奮してしまう。
 既に二度も射精しているのに、下腹部のものが、また、勢いを盛り返してきそうな雰囲気だ。
 兄貴ってば、すごく元気。
 それとも男の子って、これが普通なの?
 ……また、したい、な。
 勢いを増すペニスにつられるように、そんな衝動が、真夏の入道雲のようにむくむくと湧き上がってくる。
 ……もう一回、してしまおうか?
 っていうか、しない理由はないんじゃないかな?
 私は、したいし。
 兄貴の身体も、したがってるし。
 私の身体は、無抵抗だし。
 なら、しない理由はない、はず。
 こんな機会はもうないかもしれないし、だったら思う存分堪能しておくべきだ。
 そう結論づける。
 せっかくだから、今度は体勢を変えてみよう。
 仰向けに寝ていた私の身体をひっくり返し、俯せにする。
 こうして見ると、背中のラインというのも実に色っぽい。背中から腰、そしてお尻にかけての曲線に手を滑らせる。たまらなく魅惑的だ。
 腰を掴んで、お尻を少し持ち上げる。
 この体勢、すごくいやらしい。挿入されるために腰を突き上げているなんて、いかにもただセックスをするためだけの姿勢って感じがして、興奮してしまう。
 白くて丸いお尻を後ろから鷲づかみにして、下腹部を押しつける。
 かちかちに固くなっているおちんちんの先端が、まだ白濁液を滴らせている割れ目に押し当てられる。
 片手を添えて、ぐっと腰を突き出した。
 私の中に、兄貴の身体の一部が侵入していく。
 やっぱり、きつい。
 ぎゅうぎゅうに締めつけられる。
 それでも、先刻よりはいくぶんスムーズな挿入だった。
 二度目だからだろうか。あるいは、膣内を満たしていた大量の精液が潤滑剤代わりになっているせいもあるのかもしれない。
 ペニスが私の中に埋まっていくのに従い、膣内にあった精液が行き場を失って、じゅぶじゅぶと音を立てて隙間から溢れてくる。根元まで完全に呑み込まれ、兄貴の下腹部と、私のお尻が密着する。
 挿入しただけで、気が遠くなりそうなほどに気持ちよかった。
 挿れている側も、挿れられている側も、すごくいい。今の私はその両方の快感を同時に受けとめているのだから大変だ。
 根元まで挿入しただけで、いちばん奥まで挿入されただけで、達しそうになった。少しでも動けば、身体に電流が走ったかのように感じてしまう。
 慣れの問題だろうか、一度目よりもさらに気持ちよくなっている。
 視覚的な刺激も、一度目よりも強いかもしれない。
 ベッドの上に突っ伏して、お尻だけ突き上げた体勢はひどくいやらしい。横を向いた私の、かすかに開いた唇は、最初に口に出した精液が流れ出して白く汚れている。
 見るからに、犯している、犯されている、って雰囲気だ。
 見ていると、ドキドキする。
 ドキドキすると、下腹部のものがさらに固さを増してしまう。腰の動きがさらに激しさを増してしまう。
 自分のお尻を鷲づかみにして、本能のままにめちゃめちゃに腰を叩きつけて、快楽を貪る。
 全身汗びっしょりで、荒い呼吸で、腰を振り続ける。
 今回も、達するまでにさほど時間はかからなかった。


 翌朝――
 というか、もう昼に近い時刻。
 私は、見慣れた部屋で目を覚ました。
 自分の部屋。
 そして、自分の身体。
 覚えている限りでは、昨夜は何度も何度も自分の身体を犯し続けて、さすがに疲れ切って兄貴の部屋に戻って眠ったのは、丑三つ時もとうに過ぎた頃のはずだった。
 もう一度、自分の身体を見おろす。
 今は自分の身体で、自分の部屋で寝ている。
 どうやら、自分の身体に戻れたらしい。
 それとも、昨夜の出来事は全部夢だったのだろうか? 普通に考えれば、現実の出来事とは思えない。
 しかし、
「――っ、痛ぁ……」
 あれが夢ではない証拠があった。
 私は、全裸で寝ていた。
 そして、あそこにひどい痛みがあった。
 ひりひり、ずきずき
 鼓動に合わせて、傷の痛みが響く。
 これって、きっと、ロストバージンの痛みの名残。それに、兄貴の大きなものを挿れられてさんざん擦られた擦過傷の痛みが加わっているようだ。
 初体験の中学生の身体には、少し激しすぎたかもしれない。
 している最中は痛みなんてほとんど感じなかったから、気持ちよさにまかせて何度も何度もやり過ぎてしまったようだ。自分の身体に戻った後のことなんて考えてもいなかった。少しだけ反省する。
 痛みはかなり強く、はっきりいって洒落にならないレベルだったけれど、後悔は少しだけ。
 だって、いま思い出しても、昨夜の行為はすごく気持ちよかったから。
 あの、全身が震えて、意識が真っ白になるような感覚。
 恥ずかしい自分の姿。
 いやらしくて、だけどたまらなく気持ちのいい行為の数々。
 想い出すと、鼓動が速くなってしまう。身体の奥が熱くなって、下腹部が潤いを増してくる。
「……んんっ!!」
 手を、下腹部へ持っていく。
 ぬるりとした感触に触れると同時に、身体に電流が走ったように感じて、全身が痙攣した。
「あ……っ、は……ぁんっ!」
 すごく、濡れている。その感触はぬるぬるというよりも、びちゃびちゃという擬音が相応しい。
 割れ目の中に指先を潜り込ませると、そこは火傷しそうなほどに熱く火照っていた。
「んん……っ、く……ぅんっ、んん……」
 入口を指先でくすぐる。意志とは無関係に身体が震える。中から溢れ出てくる蜜で、さらに潤いが増していく。
 昨夜は、ここに挿れた……いや、挿れられたのだ。兄貴の、あんなに大きなものを奥まで挿れられ、いっぱいいっぱいに拡げられ、激しく擦られていた。
 そして……この中に、射精された。あのどろりとした白濁液を何度も何度も注ぎ込まれ、いっぱいに満たされた。
 昨夜の行為を想い出すと、その感覚が、興奮が、同時に甦ってくる。
 そのせいで、軽く触れただけでも普段のひとりエッチの何倍も気持ちよかった。
 指を、中に挿れる。
 中指を、いちばん奥まで。
 指が、熱い粘膜に包み込まれる。
 こんなに深く指を挿れるのは、初めてだった。これまでは挿れられなかった。なのに、今は指を根元まで挿れられる。これも、昨夜の出来事が夢ではない証のひとつだった。
 ここに、兄貴のものが入っていた。
 この中に、射精された。
 中身が自分だったとはいえ、肉体的には兄貴とセックスしてしまったのだ。
 想い出すほどに、赤面してしまう。恥ずかしすぎて顔が熱い。
 ただセックスしてしまっただけじゃない。初めてなのに、あんなに激しく。あんなに何度も。そして、初めてなのにあんなに感じてしまった。
 回数だけ見ても、やり過ぎだ。初体験の夜にあれだけの回数をしてしまう女子中学生が、はたしてどれほどいるものだろう。
 ……いやいや。
 あれは、兄貴の中にいたせいだ。男の本能に精神が引きずられていたせいに違いない。そういうことにしておかないと、私がものすごくいやらしい女の子みたいではないか。
 だけど本当に、この行為は気持ちがいい。
 私の膣内で、指が蠢いている。
 破瓜の傷に触れたのか、少し痛い。
 だけどやっぱり気持ちいい。膣を内側から拡げられる感覚がたまらない。
 もう一本、指を挿れた。
 指二本だと、本当に「拡げられている」って感じがする。この感覚がイイ。病みつきになりそうだ。
「あっ、はぁっ、ぁんっ……あぁっ」
 いつしか、夢中で指を動かしていた。
 昨夜の後遺症で、擦られると少し痛いけれど、そんなことくらいではやめられないくらいに感じてしまう。
 指の動きがどんどん加速して――
「――――っっ!!」
 昨夜あれだけしたばかりだというのに、起き抜けのひとりエッチで、またイってしまった。


 シャワーを浴び、昼近い時刻になってようやくキッチンへ行くと、一足先に兄貴が食事を終えたところだった。
 兄貴を見ると、どうしても昨夜のことを思いだしてしまう。恥ずかしくてまともに顔を見られない。
 向こうはなにも知らないのだから、私も普通にしていなければ怪しまれてしまう――そう思ったのだけれど、むしろ兄貴の様子の方がおかしかった。
 まず、ひどく眠そうで疲れた様子だ。まあ、これは無理もない。夜中過ぎまで激しい運動をしていたのだから。
 それはいいとしても、私の顔を見た時の反応がおかしかった。
 顔を紅くして、視線を逸らして、不自然なくらい私と目を合わせようとしない。食卓に拡げた新聞を読む仕種も、いかにもわざとらしい。
 気さくに話しかけてくる、普段の兄貴とはまるで違う。
 確かに、今朝は私も普段通りに兄貴に接するのは難しい。兄貴を見ると、昨夜を想いだしてどうしても赤面してしまう。
 だから、私の方を見ようとしないのはむしろありがたいことだけれど、この不自然な態度の理由が気になった。
 まさか……
 心臓が大きく脈打つ。
 昨夜のことを、覚えている?
 私が中にいた時、実は兄貴にも意識があって、記憶が残っている?
 だとしたら……すごくマズくない? 私の変態的行為が知られていたなんて。
 これは確認しなければならない。ただし、状況が確認できるまではこちらの動揺は表に出さないように気をつける必要がある。
「……あ、兄貴ぃ? どしたの? なんか、様子が変なんだけど?」
「べ、別に、なんでもねーよ、普段通りだよ」
 必要以上にぶっきらぼうな口調。明らかに動揺している。新聞を読むふりをしているけれど、その視線は記事を追ってはいない。
 絶対、不自然だ。他に心当たりがないことを考えれば、この態度が昨夜の出来事と無関係とは考えにくい。
 兄貴の傍へと移動する。
「ぜーったい、ヘンだって。ちゃんとこっち見て?」
 顔を両手で挟むようにして、強引にこちらを向かせた。
 間近から見つめ合う形になる。
 兄貴の顔が、はっきりと紅くなる。視線が泳いでいる。
「どうして、私の顔をまっすぐに見らンないの?」
「いや……別に、なんでも……」
「なんでもなくないよね?」
 追及の手を緩めずに問い詰める。
「いや……その……昨夜、ちょっと、ヘンな夢を見て……」
「夢?」
 なんとなくわかった。
 どうやら、兄貴は昨夜の出来事を夢として認識しているらしい。
 つまり、昨夜のことの記憶は一応あるわけだ。ただし、それが現実とは思っていないし、当然、私がしたこととも思っていまい。ただ、私とセックスする夢を見たと思っているのだ。
 昨夜のことを覚えているというのはすごく恥ずかしいことではあるけれど、真相を知られることに比べればはるかにマシだ。
 このまま、こちらが主導権を握るべきだろう。そうでなければ、恥ずかしくて私の方が倒れてしまいそうだ。
「夢って、どんな?」
 誰よりもよく知っているけれど、あえて訊く。この展開では、そうするのが自然だから。
「……言えない」
 真っ赤になって視線を逸らす。この反応を見るに、もう間違いない。
「あー、エッチな夢なんでしょ?」
 心臓の鼓動が大きくなるのを隠して、悪戯っぽく追求する。私の動揺は兄貴にはバレていない。図星を衝かれた兄貴は、それ以上に動揺しているから。
「そっかー、兄貴ってば、妹にエッチなコトをする夢を見ちゃったりする人なんだ?」
「ち……ちが……」
「夢って、本人の願望だっていうよね?」
「な、ないぞっ! そんな願望……」
「ふぅぅん? 本当にぃ?」
 姿勢を屈めて顔を近づけ、至近距離から見あげる。
 気まずそうな、後ろめたそうな表情を浮かべる兄貴。口で言っていることは真実ではないはずだ。
 悪戯心がむくむくと湧きあがってくる。
 同時に、昨夜のことを想い出す。
 とても恥ずかしくて、だけどとても気持ちのいい、魅惑的な行為。
 ――そうだ。
 兄貴は知らないことだけれど、私と兄貴は、もう、ただの兄妹じゃない。
 特別な関係の、兄妹。
 こんな風に間近で顔を見つめると、ドキドキしてしまう。昨日まではなかった感覚。
 だって、私は、この人と、セックスしてしまったから。
 この人と、初体験してしまったから。
 この人が、私の、初めての人だから。
 だから、こんな風に避けられるのはいやだ。
 だから……
「突然ですが、ここでクイズです」
 兄貴の眼前で人差し指を立てて、唐突に言った。
「私の左のおっぱいには、ホクロがいくつあるでしょうか?」
 夢とは思っていても、至近距離ではっきりと目にした記憶は兄貴にも残っているはずだ。
 だから、片目を閉じて、挑発するような口調で続けた。
「……正解したら、イ、イ、コ、トがあるかもよ?」

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