「……兄貴のせいだからね、バカぁっ!」
とある日曜日。
あたし、中山灯梨は、家に帰るなり兄貴の部屋へ直行して叫んだ。ベッドに寝そべって雑誌を読んでいた兄の隆哉が、不思議そうに顔を上げる。
「ずいぶん早い帰りだな。デートじゃなかったのか? 「今日こそ彼氏と初エッチ!」って意気込んで出かけたじゃん?」
からかうような口調。口元に皮肉な笑みが浮かんでいる。
これはもちろん、すべての事情をわかった上でからかっている顔だ。
「また、できなかったのか」
「うぅ……」
図星を指されて口ごもる。次の瞬間、あたしは涙目で叫んだ。
「もぉ、兄貴のせいなんだからっ! 責任とってよね!」
そのちょっとした事件が起きたのは、半年ほど前……三月のこと。
平日の日中だったにも関わらず、あたしはひとりで家にいた。
高校入試も終わって、あとは合格発表を待つだけの中学三年生。もう事実上の春休みだ。
試験の出来は問題なし。安心して発表の日を迎えられる。その間あたしは受験勉強のストレスを発散すべく、力いっぱい遊ぶことにしていた。
……で。
この日は、家に一人でいる時じゃないとできない遊びをしていた。
「ん……ふっ……くぅぅ……」
自然と声が漏れる。
いつもより少しだけ大きな声。誰にも聞かれる心配がないと思うと、ちょっと大胆になってしまう。
そう。
ひとり遊び、ひとりエッチである。
視線は、目の前のテレビに釘付けになっていた。画面には、兄のアダルトビデオが映し出されている。
あたしももうすぐ高校生。まだ実際の経験はないけれど、エッチなことには興味津々の年頃だ。
だけど、いくら興味があるとはいえ、まさか兄貴に向かって「アダルトビデオ見せて?」とは言えない。だからこうして、兄貴が大学へ行っている隙に部屋に忍び込んでいるというわけ。
画面には、かなり過激な映像が映し出されていた。
あたしとさほど歳の変わらないようなセーラー服の女の子が、大人の男性二人と、様々な痴態を繰り広げている。
男の人のアレを、口にくわえて。
顔に、射精されて。
口でしながら、もう一人の男性とセックスして。
それどころか、おしりにまで挿入されている。
ああ、もう!
十五歳の女の子には刺激が強すぎる。
だけど、視線を逸らすこともできない。
画面を凝視したまま、手を、スカートの中にもぐり込ませている。
ぬるぬると濡れた感触が伝わってくる。
くちゅくちゅと湿った音がする。
「は……あっ」
気持ち、イイ。
すっごく気持ちイイ。
ものすごく感じている。
目から入ってくる淫猥な映像のせいで、いつものひとりエッチの何倍も感じてしまっている。
「あ……ぁ……、い……ィ……」
ああ、もう! いっちゃいそう。
熱気のこもった下着の中で、指の動きが加速する。
……と。
「……ったく、なにやってるんだか」
「――っ!」
突然の声。
バネが弾けるように振り向くと、背後に兄貴が立っていた。
「こーゆー場合、兄としては淫らな妹を嘆くべきなのか、それとも妹の成長を喜ぶべきなのか……」
「……あ、あ……ど、どうしてっ?」
まだお昼になったばかりなのに、どうして兄貴がここにいるのだろう。
「午後の授業が休講になったんだよ。そしたら……」
なんともいえない表情で、あたしのことを見おろしている。
見られた。
見られてしまった。
兄貴の留守に、こっそり部屋に忍び込んで。
アダルトビデオを観ながら、ひとりエッチしていたところを。
どうしよう。
どうしよう。
とんでもないところを、見られてしまった。
すぐにでも乱れた服を整えてこの場を繕いたかったけれど、あまりのショックに身体が硬直して動けなかった。言葉すら思うように出てこない。
「ちょっ……」
あたしが動けるようになる前に、兄貴がすぐ後ろに腰を下ろした。あたしの身体に腕を回してくる。ちょうど、背後から抱きすくめられるような形になった。
「あ……兄貴?」
「続けていいぞ」
「え?」
「途中なんだろ」
……そう。
あたしってばひとりエッチの真っ最中。今まさに達しようとした、その瞬間のまま固まっていたのだ。
手は下着の中にもぐり込んで、指先が膣内に入ったままの体勢で。
「…………」
画面は過激な映像を映し続けている。下腹部の火照りはまだ治まってはいない。
だからといって、兄貴の目の前で、背後から抱きしめられるような体勢で、ひとりエッチなんてできるはずがない。
身体を捩らせてみる。だけど兄貴は離してくれない。
……本気?
本気で、このまましろ、と?
「…………」
うぅ……ん。
もう、どうしよう。
こうなったら……。
こうなったらもう、とことんまでやっちゃおうか?
心の奥で、悪戯好きの悪魔がささやく。
今さら、恥ずかしいところを見られたという事実は消せない。もう手遅れ。だったら……いいんじゃない?
せっかく、かつてないほどに燃え上がっていたところなんだし。
……よし。
決心して、意識をテレビの画面に戻す。
今のあたしみたいに後ろから抱きかかえられた女の子が、おしりを深々と貫かれて悶えている。小柄な身体が上下に弾んでいる。
そんな光景を見ながら、あたしは先ほどまでの行為を再開した。
「……ん…………くぅ」
躊躇いがちに指を滑らせる。唇から、かすかな嗚咽が漏れる。
「どうした? 先刻までの激しさがないじゃないか」
背後から兄貴がささやく。
「……」
……できるかっ!
いくら開きなおったとはいえ、実の兄の目の前で、しかも抱きかかえられて、淫らな行為に没頭できるはずがない。
この状況。これはこれで刺激的ではあったけれど、背中に兄貴の体温を感じて、どうしても快感よりも羞恥心の方が勝ってしまう。
かといって、やめてしまう気にもなれなかった。
「手伝ってやろうか?」
「え?」
身体に回されていた兄貴の手が、胸に触れてくる。ボタンが半分まで外れていたブラウスの中にもぐり込む。
「――っ」
指先が触れただけで身体が震えた。
まだ発展途上の膨らみが、ふにふにと揺すられる。
固くなった先端の小さな突起が、指先で擦られる。
気持ち、よかった。
胸がぴりぴりと痺れるような感覚。そしてお腹の奥が、きゅうっと締めつけられる。
「は……ぁ、ん……くふぅ……ん」
だんだん、息が荒くなってくる。
下着の中にある自分の指の動きが、大きくなってくる。
兄貴の手も、胸から下へと移動してくる。お腹の上を滑る。
下腹部にあるあたしの手と重なって。
「っ、――っ!」
指が、入ってきた。
中で、私の指と絡み合う。泡立つような濡れた音を立てる。
「あ……や、ぁあっ! い……」
……イイ。
気持ちよすぎて涙が滲んでくる。
もちろん初めてだった。兄貴に限らず、自分以外の指にそこを触れられるのは。
だけど、こんなに気持ちのいいことだったなんて。
「んっ……あぁ……」
自然と腰が動いてしまう。
もっと気持ちよくなりたい。女の子の本能がそう叫んでいる。
「……灯梨」
兄貴が耳元でささやく。唇で耳たぶをくすぐるように。
「最後まで……しようか?」
「え……」
その言葉に、躊躇したのは一瞬だけだった。
深く考えることもなく、あたしはうなずいていた。
もう我慢できない。
セックスへの興味は充分すぎるほどにある。そして身体は、もっと気持ちよくなりたいと望んでいる。
兄貴に与えられる快楽に、あたしの理性はすっかりとろけてしまっていた。
したい。
最後まで経験、してみたい。
相手が兄貴だとか、そんなことどうでもいい。
目の前に映し出されているビデオの女の子みたいに、めちゃめちゃに気持ちよくなってみたい。
それでもあたしは減らず口をきく。
「……兄貴のヘンタイ。妹相手に欲情してる……んでしょ」
我ながら、素直じゃない性格。
「だったら、兄に触られてこんなに濡れてるお前もヘンタイじゃないのか?」
「…………」
鼻先に指を突きつけられて、なにも言えなくなった。あたしの中にあった兄貴の指は、半透明の粘液に濡れて光っていた。
「……やさしく……してよね。…………初めて、なんだから」
いいんだろうか。
初めてなのに、実の兄貴と、こんな成り行きで。
頭の片隅で、そんなことを思う。だけどもう止まらない。
したい。
セックス、してみたい。
少なくとも今の時点では、心底そう願っていた。
「……ね、兄貴?」
「任せておけって」
「それと、避妊とか……ちゃんとしてね?」
「もちろん」
やさしく笑う兄貴に、ちょっと安心した。
おとなしく抱き上げられて、ベッドへと運ばれる。兄貴は一度離れると、机の引き出しからなにかを取り出してきた。多分あれが避妊具、コンドームっていうやつだろう。
「ん……ふぁ……」
服を脱がされていく。
もう、前戯は充分だった。生地が擦れるだけで気持ちいい。
あたしを裸にし終えると、兄貴も服を脱ぎはじめる。さすがに直視するのは恥ずかしくて、固く目を閉じて待っていた。
大きな身体が、上に覆い被さってくる。肌と肌が直に触れあう初めての感覚。相手の体温が心地よい。
「……灯梨」
「あに……き……っ! んっ……!」
あそこに、なにかが触れてくる。
指じゃない。
指よりも大きくて、太くて、弾力のある熱いもの。
ぐっと押しつけられる。
あそこが拡げられていく。
「…………っ! ――っっ」
入って、くる。
あたしの身体の中に、入ってくる。
大きい。太い。熱い。
指なんか比べものにならない質感がある。
「いっ……た……」
痛い。
初めてだから痛いのは当然だけど、その痛みは思っていたほど激しいものではなかった。それでも少しだけ涙が滲む。
内側から膣が押し拡げられる違和感。
苦しいような、不思議な圧迫感。
でも。
でも……
ちょっと、気持ちいい……かもしれない。
あたしの身体は、初めて受け入れる男性の感覚に戸惑っていた。
「ゆっくり……あんまり激しくしない、で……」
荒い呼吸をしながら、なんとか声を絞り出す。力いっぱい兄貴にしがみつく。
兄貴も、苦しいくらいの力であたしを抱きしめてくる。それがまたイイ。
動くことはできなかった。下半身が串刺しにされた感覚だった。
意図せず身体が震える。その振動だけで感じてしまう。
「はっ……ぁっ、はぁぁっ……あ……」
「どんな感じだ?」
「……すごいの……うまく言えないけど、……とにかくすごっ、い……の……」
泣き出してしまいそう。
痛いから? 苦しいから? それとも気持ちイイから? 理由はよくわからない。
「やぁぁっ! あぁぁ――っ!」
兄貴が身体を動かしはじめる。
腰を引いて先端ぎりぎりまで引き抜き、また深々と貫いてくる。
ものすごい摩擦感。ものすごい刺激。
あたしは悲鳴を上げて、兄貴の背中に爪を立てた。
「ひゃっ、く、あぁぁっ、い……やぁぁっ! あぁぁっ! あぁーっ! ……っ!」
だんだん加速していく動きに、やがて悲鳴も上げられなくなる。呼吸すら思うようにできない。
ただ、口をいっぱいに開けて。
よだれを流して。
「――――っ、っ!」
兄貴に力いっぱいしがみついて。
全身を襲う初めての刺激に耐えて。
頭の中が真っ白になるのを感じていた。
そこまでは、よかった。
初めてを兄貴としてしまったこと自体、後悔はなかった。
早く経験したいと思っていたし、だけど彼氏はいないし。
それに、初めてなのにずいぶん感じてしまったから。思っていたほど痛くなくて、すごく気持ちよかったから。
だけど。
あたしが蒼白になったのは、ことが終わって意識が戻ってきた時。
なんと、コンドームが中で破れていたというのだ。
慌てて計算してみたら、かなり危険な日。もう、真っ青になるどころの騒ぎじゃない。
そしてよりによって、次の生理は一週間も送れて来た。生理が始まるまでの一週間、本当に生きた心地がしなかった。
それで懲りたから、もちろん兄貴とはそれっきり。もともと「兄貴が好きで」っていうんじゃなくて、成り行きとエッチへの興味でしたことだし。
……で、四月。
あたしも高校生になった。
やがて、同じクラスの彼氏もできた。
しばらく健全な付き合いを続けた後、キスとか、もうちょっと先のことまで進展して、そろそろ最後まで……と思い始めた頃。
あることに気がついた。
怖い、のだ。
キスとか、抱擁とか、触られることに問題はない。むしろ気持ちいい。
なのに最後の一線を越えようとすると、身体が震えて、全身に鳥肌が立ってしまう。気持ちいいなんて感覚もすべて吹き飛んでしまう。
どうしても受け入れることができない。
あの、兄貴とエッチして生理が遅れた時の恐怖が、深層意識の中に刷り込まれてしまっているのだ。
「それもこれも、全部兄貴のせいだからね!」
「うーん……いやしかし、中で破れたのは、灯梨のが締まりがよすぎるせいかと」
「――っ!」
まったく、いきなりなにを言い出すのやら。顔中真っ赤になって兄貴を睨む。
「あーにーきぃぃ?」
「いや……まあ、うん、あれは俺が不注意だった」
「じゃあ、なんとかしてよ。あたしの恐怖症を治す方法! これじゃあいつまでも、彼氏とエッチもできやしない!」
「うーん……そうだなぁ……」
腕組みをして考え込む兄貴。
正直なところ、単に八つ当たりしたかっただけ。すぐにいい解決策が出てくるなんて期待していなかったから、一分と経たずに兄貴が顔を上げた時には少し驚いた。
「――よし、思いついた」
「どんなっ?」
「彼氏とエッチできない原因は、妊娠に対する恐怖だよな?」
「……うん」
「だったら、妊娠の可能性が絶対にない状況でたくさんエッチして、エッチの気持ちよさ、楽しさを身体に覚え込ませればいい。エッチしたいって気持ちが恐怖を上まわるようになるくらいに、な」
「……って、簡単に言うけど」
確かにその意見には一理ある。しかし根本的な問題があるのも事実だ。
「でも、100%安全な避妊法なんてないんでしょ? コンドームだってピルだって、可能性はゼロじゃないって教わったよ?」
保健体育の教科書に、ちゃんと書いてある。たとえコンマ以下の可能性だって、あたしの恐怖心を呼び起こすには充分だ。なのに、兄貴ってば妙に自信ありげな様子。
「ところが、ひとつだけあるんだな」
「?」
「これだよ」
そう言って、DVDのパッケージを手に取って見せる。それは、あの時に観ていたAVだった。
「え?」
いったい、なにを言わんとしているのだろう?
半年前の記憶を辿り、そのDVDの内容を思い出す。
あれは……そう。
「……って、まさか!」
「その、まさか」
兄貴は悪戯っ子のような笑みを浮かべて言った。
……そうして。
あたしは、兄貴に『おしり』を開発されることになってしまったのだ。
「ん……くっ……、ぅんっ! く……はぁぁ」
あたしはベッドの上に俯せになって、膝を立てておしりだけ突き上げたような格好にされていた。
この体勢、後ろにいる兄貴からはおしりが丸見えになっているはずで、恥ずかしいことこの上ない。しかも、おしりの穴を弄られているのだ。
絶対に妊娠の可能性なんてない、おしりでのエッチを経験するために。
ローションまみれの指が、おしりの穴をくすぐっている。ぬるぬるとした感触は、くすぐったくて、そして……。
「どうだ?」
「ん……っ、ちょっと…………イイ、かも……」
ただくすぐったいだけじゃなくて、なんていうか、微妙に気持ちいい。
「もっと力抜けよ」
「う……ぅんっ……くふ……ぅ……」
一瞬だけ緩んだおしりの穴に、兄貴の指先がもぐり込んでくる。
ゆっくりとミリ単位で。じわじわと焦らすように。
だけど決して後戻りはしない。
「ふぅ……ゆぁ……ぁ」
第一関節くらいまで入ったようだ。
ちょっとだけ気持ちいい、かもしれない。『前』を弄られるのとはまた違った感覚だ。
筋肉が収縮して、指をぎゅうっと締めつけている。
少し苦しいような感覚。
だけど悪くない。決して不快じゃない。
はっきり言ってしまえば、イイ。
「は……ぁっんぅ……」
一度動きを止めた指が、また進みはじめる。
ゆっくり、ゆっくり、優しく愛しむように。
やがて、指が根本まで埋まる。
かき混ぜるように、中で円を描く。
ゆっくりと、じっくりと、ほぐされていく。
そこは本来、セックスのための場所じゃない。だから『前』よりもずっと丁寧に、時間をかけてほぐしていかなければならないのだそうだ。
だけど。
ヴァギナほどはっきりと「感じる」場所ではないとはいえ、そんなに時間をかけて弄られ、愛撫されたら、我慢できなくなってしまう。
目で見なくても、指で触れなくても、濡れているのがわかる。女の子の部分が蜜を滴らせている。
「……ひゃっ、ぁんっ! あぁっ!」
おしりを弄っているのとは別の指が、そこに触れてくる。熱い蜜を指ですくい、周辺に塗り広げる。いちばん敏感な突起を指先でくすぐる。あたしは甲高い悲鳴を上げる。
「あ……ぁ…………ひぃ……ぅ、ひぁぁっ!」
膣内に指が入ってくる。とろけるほどに濡れたそこは、兄貴の指をスムーズに受け入れた。
「や……、あ、やぁぁ……あんっ」
あたしの身体の中で、指が動いている。
前と、後ろと、同時に。
薄い肉壁を隔てて隔てて擦れ合う二本の指。
信じられない。ありえない。
これまでに経験したことのない、すごい刺激。
あたしは荒い呼吸を繰り返していた。口を閉じることすらできない。
真白いシーツに唾液の染みが広がっていく。
愛撫はいつまでも続く。
やがて、時間の感覚もなくなってしまう。
いったいどのくらい続いたのだろう。三十分? 一時間? それとももっと長い時間?
何度も何度も、快楽の頂を迎えた。そしてさらなる高みへと昇っていく。
「……そろそろ、いいかな」
兄貴の声に、少しだけ我に返った。
濡れた内腿がひんやりと冷たい。なのにお腹の奥はかっかと熱い。
「……挿れるぞ?」
「…………ん」
やっぱり緊張してしまう。無意識のうちに、全身の筋肉が強張る。
「力、抜いて」
そう言われても、頭ではわかっていても、身体はなかなかいうことをきかない。
兄貴の手がおしりをつかんで左右に拡げる。指とは違った弾力を持つ、熱くて大きなものが押しつけられる。
「く……ぅんっ、……あ、くぅぅっ……」
拡がっていく。拡げられていく。
おしりの穴が。
そこへ、押し込まれてくる。
反射的に収縮しようとする括約筋を押し拡げて、兄貴が中に入ってくる。
「あ……ぁ…………ぁっ、ふ……ぅうんっ、ふぁぁ……」
身体の中に男の人を受け入れるという、半年ぶり、生涯二度目の体験。
場所の違いのせいだろう。初めての時よりも強い抵抗感がある。
狭い穴を拡げられる痛み。我慢できないほどではないけれど、無視することもできない。
苦しい。
他に喩えようののない、じんわりとした苦しさがある。
自分の意志とは関係なく、おしりは、中の異物を体外に押し返そうとしている。その動きに抵抗して兄貴が侵入してくる。
「い……た……、ちょ……苦し……」
「自分で、前を触ってろよ。気が紛れるから」
「う、ん……」
言われるままに、手を下半身に持っていった。濡れた割れ目に指を押しつける。
「ふあぁぁっ……あっ、あぁぁっ!」
ちょっと触れただけで、信じられないくらいに気持ちよかった。限界まで充血していた女の子の部分が痺れる。
「あぁぁ――――っ!」
軽い絶頂を迎える。一瞬意識が遠くなったその隙に、兄貴が下半身を突き出して、ぐいっと奥まで入ってきた。
「ひぃっ、い……あぁぁっ!」
痛い。
苦しい。
だけど……。
だけど、意識が飛びそうになるのはそのせいじゃない。
気持ちいいから。
あまりにも気持ちイイから。
これまで一度も経験したことのない、強い刺激と快感。
無我夢中で、二本の指を奥まで突き入れる。そこは、不思議な圧迫感があった。膣壁の向こう側に、熱くて、脈動しているものが存在する。
あたしの中に在る、兄貴の身体。おしりを串刺しにして、兄貴がそこにいる。
あたしの身体を貫いている。
痛い。
苦しい。
深々と貫かれている身体が小刻みに震える。
気を紛らわせるように、必死に指を動かして膣内をかき混ぜる。
それだけでもう激しすぎるほどの刺激なのに、さらに、兄貴が動き始める。
根本まで突き入れられ、あたしのおしりと兄貴の下腹部が密着する。お腹の奥を突き上げられるような感覚だった。
「うっ……くぅあ…………ぁっ!」
太い杭を打ち込まれたみたいに、ぴくりとも動けない。
ちょっとでも動いたら、悲鳴を上げてしまいそうだ。「動かないで」という一言すら発することができなかった。
「あ…………ぁ……」
全身の筋肉が強張って、身体が震える。
「い……う、あぁぁっ!」
今度は、ゆっくりと引き抜かれていく。
まるで、内臓を引きずり出されるみたい。入ってくる時は『前』と少し似た感覚だったけれど、これは他に喩えようもない。通常の排泄とも違う、まったく未知の感覚だった。
多分、肉体的なものだけじゃなくて、精神的な影響も大きいんだと思う。
あたしは今、おしりでエッチしているのだ。
こんなの、普通じゃない。
学校の友達にも経験済みの子は何人かいるけれど、彼女たちとは比較にならない。
初めてが実の兄貴で、二回目もやっぱり兄貴で、しかもおしりでなんて。
そんな子、いない。
あたし、すっごい普通じゃないことしてる。
こんなこと、いいんだろうか。
ぶっちゃけていえば、近親相姦。
しかも、おしりで。
こんな、お尻を突き上げた恥ずかしい格好で。
後ろから兄貴に貫かれて。
前を、自分の指で弄って。
それで感じている。
シーツを噛みしめて、悶えている。
「ひっ……ぃっ、くっ……ぅぅんっ」
先端近くまで引き抜かれた兄貴のものが、また打ち込まれてくる。
締めつける括約筋の抵抗をものともせず、一気に奥まで貫かれる。
「やぁぁ……あぁっ、あぁぁっ!」
痛い。
苦しい。
だけど、気持ちいい。
やめて。
抜いて。
やめないで。
抜かないで。
もっと奥まで貫いて。
相反する想いが頭の中で渦巻く。
「ひゃ……はぁぁっ、あぁっ、い……くぁぁっ!」
熱い、固い、太い杭が、引き抜かれては打ち込まれる。往復運動を何度も何度も繰り返す。
痛い。
苦しい。
気持ちいい。
やめて。
抜いて。
やめないで。
もっと貫いて。
動きが加速していく。兄貴の荒い息が聞こえる。
おしりをぎゅっと鷲づかみにして、下半身を打ちつけてくる
痛い。
苦しい。
気持ちいい。
やめて。
もっと、して。
いたい。
くるしい。
きもちいい。
やめて。
もっと。
きもちいい。
もっと。
きもちいい。
きもちいい。
きもちいい。
もっと……もっとして!
もっと、もっと。
視界が真っ白になる。
もっと、もっと。
それ以外なにも考えられなくなる。
もっと、もっ…………。
「――――っっ!!」
この時のあたしは、悲鳴のような喘ぎ声を上げながら失神したのだと、後で聞かされた。
「さぁ、今日こそヤルぞ!」
その日、あたしはやる気満々で、出かける仕度をしていた。
いちばんお気に入りの下着と服を着ける。
念入りに髪をセットする。
久々に、彼氏の家へ遊びに行くのだ。
当然、「今日こそ、今度こそ最後まで」という決意を胸に秘めて。
あれから何度も、兄貴と……した。
もちろん、いつもおしりで。
最初は抵抗もあったし少し痛かったけれど、もうすっかり慣れて、気持ちよくなっている。
率直に言えば、おしりでのエッチがやみつきになっていた。
もう、平気。
おしりのエッチは、妊娠の心配がないから全然怖くない。
彼氏とだって、おしりでならエッチできると思う。
「というわけで、行ってくるねー!」
「……ま、がんばれ」
この時のあたしは目先のデートに夢中で、見送る兄貴の意味深な笑みには気づいていなかった。
「……兄貴のせいだからねー! バカーっ!」
予定よりもかなり早くに帰ってきたあたしは、そのまま兄貴の部屋へ直行して叫んだ。
ベッドに寝そべって携帯ゲーム機で遊んでいた兄をフライングボディプレスで押し潰そうとするが、兄貴はまるでその行動を予想していたかのように、身体の向きを変えてあたしを受け止めた。
「ずいぶん早いな」
飄々とした口調で言う。
「ラヴホのサービスタイムだって、まだ残ってる時刻だぞ?」
「うるさい、バカ!」
枕をつかんで力いっぱいぶつけてやる。だけど軽い羽毛枕ではなんのダメージも与えられない。
「その様子だと、またダメだったのか」
兄貴は驚いた様子もなく言った。
「で、なにがあった?」
「う……」
あたしは涙目で答える。
「……お尻でして、って言ったら……」
「言ったら?」
「彼氏に思いっきり退かれて、フラレちゃったじゃない。ばかぁ――っ!」
もう一度枕をぶつけようと手に取る。
「ふむ……やっぱりか」
「……やっぱり?」
聞き捨てならない台詞だった。
枕を頭の上に構えたまま、苦笑している兄貴を睨みつける。
「いや、そういうこともあるかもしれないなーと、可能性として考えてはいたよ。彼氏ってお前と同い年だろ? まだガキだもんな、さすがに初めてで『後ろ』は抵抗あるかも……と」
「あーにーきぃ? どーして黙ってたの?」
枕を捨てて、兄貴の首を絞めようとする。だけど一瞬早く、兄貴の手があたしの手首をつかまえた。
「当然だろ」
あたしと兄貴では体格がまるで違う。簡単に、身体の上下を入れ替えられてしまった。そのまま、ベッドの上で押さえつけられてしまう。
「可愛い妹を他の男に取られるなんて、我慢ならないもんな」
首筋に唇を押しつけるようにして、兄貴がささやく。
「……え?」
なに言ってるの、兄貴ってば?
思いもしない台詞に戸惑っている隙に、スカートをまくり上げられ、下着を脱がされてしまった。
脚の間に、兄貴が身体を入れてくる。
そして……
「ちょ……兄き……や、あぁぁっ!」
ぎゅうっと抱きしめられて。
逃げることも抗うこともできなくて。
兄貴が、あたしの中に入って来る。
おしりじゃなくて、ちゃんと、女の子の部分に。
前戯もなにもなしで。
避妊具もなにもなしで。
なのに――
「あぁっ、あぁ――っ!」
意外なほどにスムーズな挿入だった。
奥まで貫かれただけで、あたしは軽くイってしまった。
兄貴はそれで動きを止めることなく、激しいピストン運動をはじめる。
気持ちいい。
気持ちいい。
ひと突きごとに、蜜が溢れてくる。
気持ちいい。
気持ちいい。
どうして?
どうしてこんなに気持ちいいんだろう?
まったく怖くない。
鳥肌も立たない。
どうして?
避妊してないのに。コンドームもつけていないのに。
兄貴に抱きしめられて、挿入されて、激しく動かれて。
それが、ただただ気持ちいい。
「あぁっ、あぁぁっ、兄……きぃ……イィっ、あぁぁっ!」
おかしくなりそう。
もっと。
もっと!
もっと!!
ただそれしか考えられない。
自分から腰を動かしている。
頭が真っ白になる。
気持ちいい。
どうして?
どうして、こんなに気持ちいいの?
そんなの、…………ひとつしかあり得ない。
先刻の兄貴の台詞。
兄貴ってば……
知らなかった……
あたしのことが、好きなんだ……
あたしも……
考えてみれば、兄貴って……
あたしの、初めての人で。
だから、あたしも……
「あぁっ……兄貴ぃ…………い、い……好き、だからっっ!」
力いっぱい兄貴にしがみついて、あたしは叫びながら達してしまった。
「……もぉ、兄貴のせいだからね。責任とってよね」
目を覚ましたあたしは、兄貴にぎゅうっと抱きついて、甘えた声で言った。
大きな兄貴の手が、頭を優しく撫でてくれる。
それが、とても心地よい。
もう、兄貴じゃなきゃだめ。
まったく……。
兄貴が相手じゃないとエッチできない、気持ちよくなれない身体にされてしまうなんて……。
……でも。
その事を喜んでるあたしにも、問題があるんだろうなぁ。
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